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騒音シミュレーション事例CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(20)(4/4 ページ)

“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第20回では、騒音シミュレーションの事例をいくつか紹介する。

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遮音壁の性能予測

 連載第19回ですが、読み返してみると「騒音のオクターブ分析」が少し分かりずらかったようです。この項の計算式は、図13に示すように遮音壁で隔たれた2つの部屋があり、左側に音源があったときの右側の音圧レベルや騒音レベルを予測するために使用します。

遮音壁で隔たれた2つの部屋
図13 遮音壁で隔たれた2つの部屋[クリックで拡大]

 まず、音源側の音圧レベルを騒音計で測定します。騒音計は例えば66[dB]などと表示しますが、これだけでは情報が不足しています。オクターブ分析機能が付いた騒音計で測定します。すると、表2のような測定結果が得られます。

オクターブバント中心周波数 Hz 63 125 250 500 1000 2000 4000 8000 合成音
オーバーオール値
音圧レベル
合成音
オーバーオール値
音圧レベル
音源側の部屋
音圧レベルLp
Zモード
dB 62.5 61.0 58.5 53.0 50.0 45.5 39.0 36.0 66.1 56.0
表2 1分の1オクターブ分析結果

 合成音は普通騒音計の指示値で、オーバーオール値のことです。音圧レベルと騒音レベルがありますが、騒音レベルはAモードで測定した値です。では、1分の1オクターブ分析結果から音圧レベルを計算しましょう。連載第19回の式11を使います。これを式18として再掲します。

式18
式18

 63[Hz]成分の音圧レベル(SPL)は62.5[dB]なので、式18のかっこ内を計算します。

式19
式19

 125[Hz]成分の音圧レベル(SPL)は61.0[dB]なので、これも計算します。

式20
式20

 同様の計算を8000[Hz]成分まで計算して、式18に代入します。

式21
式21

 表2の合成音と一致しました。

 では、遮音壁の等価損失を計算しましょう。連載第18回の式27です。表3のようになります。

周波数 Hz 63 125 250 500 1000 2000 4000 8000
遮音壁の
等価損失
dB 11 15.7 20.7 25.9 31.2 36.6 42.1 47.7
表3 遮音壁の等価損失

 遮音壁を隔てた右側の部屋の音圧レベルは、連載第19回の式7で計算しますが、ここでは式22とします。

式22
式22

 63[Hz]成分、125[Hz]成分は次式となり、同様の計算を8000[Hz]成分まで計算すると周波数成分は表4の値となります。

式23
式23
式24
式24
オクターブバント中心周波数 Hz 63 125 250 500 1000 2000 4000 8000
右側の部屋
音圧レベルLp Zモード
dB 51.5 45.3 37.8 27.1 18.8 8.9 −3.1 −11.7
表4 遮音壁を隔てた右側の部屋の音圧レベル予測値

 表4の値を式18に代入します。

式25
式25

 右側の部屋の音圧レベル(騒音計の指示値)は52.6[dB]と予測できます。音源側の測定を騒音計のAモードで行った場合は、その予測値はAモードで測定したときの値となります。

 連載第2回から今回までで、振動・騒音の計算、測定、シミュレーションについて述べてきました。次回は全体のまとめとなる伝達関数を使った振動・騒音対策の考え方を述べます。お楽しみに! (次回へ続く

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表


1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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