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騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜遮音について〜CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(18)(1/5 ページ)

“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第18回では、騒音低減技術の基本である「遮音」と「吸音」のうち、遮音について取り上げる。

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 今回は、騒音低減技術の基本である「遮音」を取り上げます。まず、遮音と吸音について説明した後に、伝達関数をベースとした騒音低減施策の立案と音のシミュレーションへと進みます。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

音の透過、遮音、等価損失

 前回と同じ内容になります。「音は圧力波である」と紹介しましたが、エネルギーを持っているため単位面積の仮想平面を通過するエネルギーとして説明します。単位は[W/m2]です。音圧の実効値の二乗がエネルギーとなります。壁に音波が入射したときの音波を図1に示します。

音の透過と反射
図1 音の透過と反射[クリックで拡大]

 透過率と等価損失は次式で定義されます。

式1
式1
式2
式2

 騒音源を箱で囲うと音が小さくなります。小さく聞こえた音は箱の壁を透過した音であり、“箱が遮音をしている”といえます。

等価損失の測定法

 等価損失には垂直入射の等価損失TL0と拡散入射の等価損失TLがあり、設計の場面では後者を使います。拡散入射の等価損失TLの測定方法はJISで規定されていて(参考文献[1])、残響室で拡散音場を作って測定します。測定方法を図2に示します。

拡散入射の等価損失の測定方法
図2 拡散入射の等価損失の測定方法(参考文献[1])[クリックで拡大]

 残響室の形状はJISには規定されていませんが、図2では筆者が見学した残響室をベースにモデリングしてあります。等価損失は次式で求めます。Aは吸音力で受音室の壁の面積と吸音率の積です。

式3
式3

 式3の第3項は、受音室の壁の吸音効果によって測定値L2が小さくなるため、それを補正するものです。測定周波数帯は3分の1オクターブ間隔で規定されていますが、遮音材のカタログデータや設計の現場では1分の1オクターブ間隔のデータを使用することが多く、下記の周波数となります。

62.5[Hz] 125[Hz] 250[Hz] 500[Hz] 1000[Hz] 2000[Hz] 4000[Hz] 8000[Hz]

 図2の音源は帯域制限ノイズ(バンドノイズ)の音です。500[Hz]の場合、音源は500[Hz]ちょうどの音(純音ですね)を出すのではなく、図3の周波数を含む音を出します。

帯域制限ノイズ
図3 帯域制限ノイズ[クリックで拡大]

参考文献:

  • [1]日本規格協会|実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法|JIS A 1416(2000)

等価損失測定における測定点数について

 図2において、音圧レベルの測定点数ですが「5点以上」というのがポイントです。なぜなら部屋の中の音圧レベルは場所によって異なる値となるからです。後述することになりますが、部屋の中では定在波が立っています。波動方程式を真面目に解くタイプの音響シミュレーションソフトでは、受音室の中の音圧レベルは図4のようになっており、場所によってかなり異なります。

残響室の音圧レベル
図4 残響室の音圧レベル[クリックで拡大]

 このことは等価損失を測定する残響室だけの話ではないことに注意してください。普段の室内の騒音測定においても同じことが起こっています。オーバーオール値、つまり全ての周波数を含んだ騒音レベル測定では気付きにくいのですが、騒音の周波数分析をするとそれぞれの周波数成分で定在波が立っており、場所によっては20[dB]以上の違いが生じます。よって室内の騒音測定では測定点を多くする必要があります。連載第17回図4で「入射波と反射波の和によって壁近傍に定在波ができる」と述べました。屋外の騒音測定においては、地面への入射波と反射波の和によっても定在波が立ちます。定在波の腹と節で音圧レベルが異なるので、測定点の高さで騒音レベルが変化することになります。敷地境界線の騒音測定では測定点の高さが規定されていますが、実は測定点の高さを変えると結果が変わる可能性があり、念のため測定点の高さを変えて測定しておく必要があると考えています。

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