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新型コロナからアルツハイマー病の神経細胞死を抑制するペプチドを開発医療技術ニュース

東京都立大学は、新型コロナウイルスのタンパク質Orf9bが、アルツハイマー病関連キナーゼMARK4の活性を非競合的に阻害することを発見した。また、Orf9bの配列から、細胞透過性MAPK4阻害ペプチドを開発した。

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 東京都立大学は2023年11月13日、新型コロナウイルスのタンパク質Orf9bが、アルツハイマー病関連キナーゼMARK4(微小管親和性調節キナーゼ4)の活性を非競合的に阻害することを発見したと発表した。Orf9bの配列から、細胞透過性MAPK4阻害ペプチドTAT-Orf9b10-18_78-95を開発した。

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研究の概要[クリックで拡大] 出所:東京都立大学

 アルツハイマー病では、微小管結合タンパク質タウが脳に蓄積し、神経細胞死を引き起こす。疾患脳においてタウは、過剰にリン酸化されることで凝集、蓄積するが、このリン酸化にMAPK4の関与が示唆されている。

 今回の研究では、Orf9bがMARKファミリーと相互作用することから、Orf9bの配列からMARK4を阻害するペプチドを開発。哺乳類培養細胞にOrf9bを発現させ、タウのリン酸化を指標にMARK4活性の影響を調べたところ、タウのリン酸化が阻害されることが分かった。

 Orf9bは全長97アミノ酸で、これを人工合成するために、MAPK4の阻害に必要な最小限の領域を探索した。その結果、Orf9bの10〜18番目と78〜95番目のアミノ酸をつないだペプチドOrf9b10-18_78-95を合成すると、MARK4の活性阻害に十分であることが分かった。

 MARK4の活性阻害パターンを見ると、Orf9b10-18_78-95は濃度非依存的に阻害していた。このことから、MAPK4の基質認識部位とは異なる領域に結合して立体構造を変化させる、アロステリック阻害であることが示された。

 アロステリック阻害剤は、一般的に競合阻害剤よりも特異性が高い。実際にOrf9b10-18_78-95は、MAPK2の活性は阻害せず、MAPK4に対する特異性が高かった。

 細胞外から加えることを想定し、TAT(細胞膜透過ペプチド)を付加したTAT-Orf9b10-18_78-95を作成。培養神経細胞に取り込まれ、MAPK4によるタウのリン酸化を阻害することを確認した。ヒトのタウを発現するショウジョウバエに経口投与すると、TAT-Orf9b10-18_78-95は脳内に取り込まれ、タウによる神経細胞死が抑制された。

 MAPK4阻害は、アルツハイマー病の治療戦略として注目されている。今後、MAPK4を標的とした、アルツハイマー病の治療法開発につながることが期待される。

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