国土交通省は2023年11月28日、第7回全国都市交通特性調査の結果とりまとめを発表した。移動の目的や交通手段を尋ねる調査で、1987年からおおむね5年おきに実施されている。
調査は2021年10月下旬〜11月末に行われた。この期間は感染者数が大幅に増加したオミクロン株の新型コロナウイルス感染症が流行する前で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間外だ。また、調査前の9月や12月以降と比べて移動人口の割合が相対的に多い時期だった。コロナ禍の影響を受けつつも、一定の移動があったといえる。
全体の傾向としては、外出した人の割合や1日の移動回数は調査開始以来最低となった。直近では2005年から2010年にかけて外出した人の割合や1日の移動回数が増加したものの、2010年から2015年、2015年から2021年にかけて減少傾向が続いている。
鉄道やバス、自動車、自動二輪車、自転車、徒歩といった各交通手段での移動回数は徒歩を除いて減少した。構成比で見ると、自動車や徒歩の割合が増加しており、コロナ禍の影響がうかがえる。
世代別の移動の傾向についてもまとめた。2015年以降、20代と70代の移動回数が逆転して70代の方が多くなっており、2021年はその差が拡大した。高齢者よりも若年層の移動が減少しているのは、米国や英国でも同様だという。20代の外出率を男女別に見ると、男性は平日の通勤や業務の移動が減少した。女性では休日の買い物や買い物以外の移動が少なくなった。
9歳以下の子どもが居る世帯では、送迎を目的とする女性の移動が男性より5倍多いことが分かった。夫婦ともに正社員の共働き世帯であっても女性の方が送迎を目的とする移動が多いが、男性の在宅勤務により男女で送迎の移動回数が同程度になることが示唆されたとしている。
高齢者の傾向を見ると、70代は60代に比べて通勤や業務の移動回数が大きく減少し、買い物や散歩などでの移動回数が増加した。70代の平日1日当たりの移動回数に関しては、0回(外出しない)の人と3回以上移動する人の割合が他の年代に比べて多いことが分かった。
70代で自動車の運転免許を持っていない場合は、最寄りの駅やバス停までの距離が近ければ外出率が高い傾向が示された。
コロナ禍で、在宅勤務者は通勤者と比べて移動回数が少ないことが分かった。在宅勤務者の交通手段は、公共交通が少なく徒歩が多かった。食品や日用品以外の買い物や娯楽などの活動をコロナ禍でオンラインに移した割合は、70代と比べて20代が高いことが示された。
観光などはオンラインに移行せず、コロナ禍前と比べて外出の減少割合が大きかった。通院を目的とする外出はコロナ禍でも減少せず、オンラインにも移行しなかった。
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