超高齢社会の「移動の足」を支えるには? 生きがいになる外出の促進を:交通政策白書2020を読み解く(後編)(1/7 ページ)
本稿では交通政策白書2020の「要旨」を基に、前編ではCOVID-19の影響も含めた交通の動向について確認した。後編では、テーマ章である第2部について、日本における高齢者の生活と生きがいづくり、外出の実態について考察した上で、超高齢社会の「足」を支える施策の最新動向や先進的な取り組みを紹介する。
国土交通省は2020年6月に「令和元年度交通の動向」および「令和2年度交通施策」(以下、交通政策白書2020)を公開した。交通政策白書2020の第1部では、交通を取り巻く社会・経済の動向、各分野の交通の輸送量・ネットワーク・交通事業の動向や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響について整理し、第2部では超高齢社会における高齢者の移動を支える施策や先進事例を紹介している。第3部では2015年2月13日に閣議決定した「交通政策基本計画」に盛り込まれた施策の進捗(しんちょく)状況や今後の取組方針を整理している。
→交通政策白書2020を読み解く(前編):「日本の交通の動向と新型コロナウイルスが及ぼした影響」
本稿では交通政策白書2020の「要旨」を基に、前編ではCOVID-19の影響も含めた交通の動向について確認した。後編では、テーマ章である第2部について、日本における高齢者の生活と生きがいづくり、外出の実態について考察した上で、超高齢社会の「足」を支える施策の最新動向や先進的な取り組みを紹介する。
最速で進む日本の高齢化
日本の人口は、2008年に1億2808万人とピークに達した後、減少局面に転じた。年少人口(15歳未満の人口)と生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)の減少が進んでいる一方で、高齢者人口(65歳以上の人口)は増加を続け、高齢化率(65歳以上人口割合)は2015年には26.6%と急速に上昇している。今後、高齢化率は2025年に30%、2050年に38%に達すると予測されており、世界がこれまで経験したことのない超高齢社会を迎える見込みとなっている(図1、図2)。
平均寿命は、生活環境の改善、食生活・栄養状態の改善、医療技術の進歩などにより男女ともに過去最新を更新し続け、2017年は、男性81.09歳、女性87.26歳となっており、2065年には男性84.95歳、女性91.35歳となると見込まれている。日本の平均寿命は各国と比べても長く、世界に先駆けて「人生100年時代」に突入していくと予想される(図3、図4)。
また平均寿命だけでなく、日常生活に制限なく健康で生活できる「健康寿命」も延伸している。現在、男性の健康寿命は72.14歳、女性の健康寿命は74.79歳となっている。2001年から2016年にかけての平均寿命と健康寿命の推移を見てみると、平均寿命は男性で2.91年、女性で2.21年増加しているが、健康寿命でも男性2.74年、女性2.14年増加しており、平均寿命の延伸とともに、健康寿命も男女ともに延伸している(図5)。
交通政策白書2020は、こうした「人生100年時代」において、高齢者一人一人が、自立しつつ、健康で生きがいをより感じながら老後を過ごすためには「働く」「学ぶ」「遊ぶ」「休む」といった行動を適切に組み合わせて生活設計することが重要だと述べている。
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