富士経済は2023年11月27日、車載用二次電池の世界市場の調査結果を発表した。多くの国がカーボンニュートラルの達成を目指す2050年に、市場規模は2022年比4.0倍の74兆3556億円に拡大すると見込む。このうち、駆動用が同4.4倍の72兆2961億円、補機用は同11.9%減の1兆8595億円と予測している。
駆動用バッテリーの市場規模拡大は、車両の電動化がけん引役となる。世界各国が環境規制を強化しており、2035年までに電動化されていないエンジン車の販売を禁止する国が欧州や中国に多い。欧州、北米、中国はそれぞれ20兆円前後に市場が成長する。
補機用は、エンジン車やマイルドハイブリッド車のエンジン始動や、電動車のバッテリーシステムの起動に使用する。自動車の生産台数に合わせて市場は堅調に推移するが、長期的には台数の伸びが鈍化し、2050年ごろには縮小すると予想する。
2050年の車種別の駆動用バッテリーの動向についてもまとめた。乗用のEV(電気自動車)向けは2022年比5.3倍の66兆3012億円、トラックやバスといった商用EV向けは同4.2倍の3兆1635億円、HEV(ハイブリッド車)向けは同7.1%増の5855億円と見込む。
乗用EVは電動化されていないエンジン車の販売終了受けて台数が拡大する。商用EVは足元では中国が積極的に導入しているが、今後は燃費規制の強化などに伴い欧州や北米の需要も拡大するとしている。物流や公共交通機関のカーボンニュートラルが進むことも商用EVの普及を後押しする。
HEVは電動車の当面の主力として好調を維持する見通しだ。EVの普及に伴い将来的には中国や欧州で縮小するものの、新興国では一定の需要を見込む。日本では、2035年までに新車販売を全て電動車にする政府の方針や、2030年以降に電動化されていないエンジン車の販売を禁止する東京都の政策などがHEVの需要につながる。
車載用二次電池の市場拡大に伴い、バッテリーのセルマネジメントユニットも需要が高まる。セルマネジメントユニットの市場規模は、2023年に2022年比34.3%増の4774億円、2050年には同6.8倍の2兆4170億円と予測する。EVはバッテリーのセル数が多いため、EVの普及がセルマネジメントユニットの市場に大きく影響する。ただ、バッテリーセルをバッテリーパックに統合し、空間利用率やエネルギー密度を高めるセルトゥーパック技術がトレンドのため、1台当たりのバッテリーセル搭載数が少なくなり、セルマネジメントユニットも減少する。そのため長期的には電動車の市場の伸びほどの成長は期待できないとしている。
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