団地の中をロープウェイ型ロボットが買い物配達、パナソニックHDなどが実証実験:物流のスマート化
パナソニック ホールディングス、東急、都市再生機構は、川崎市麻生区のUR虹ヶ丘団地で、空中配送ロボット技術を活用した新たな配送サービスの実証実験を開始することを発表した。
パナソニック ホールディングス、東急、都市再生機構は2023年11月17日、川崎市麻生区のUR虹ヶ丘団地で、空中配送ロボット技術を活用した新たな配送サービスの実証実験を開始することを発表した。
高齢化が進む中で買い物に苦労する人が増加する一方で、物流業界では人手不足が限界に達しており、今までのやり方のままでこれらの課題を解決するのが難しい状況になっている。これらを解決するためにさまざまなロボット技術の活用が期待されている。
今回3社では、これらの課題解決を目指し、空中配送ロボットの技術およびサービスの効果検証を行う。また、空中配送ロボットにより商品が届けられる受取場所に人が集うことによるウェルビーイングの向上や、コミュニティー形成などへの貢献についても検証する。今回の3社の協業について、都市再生機構 東日本賃貸住宅本部 神奈川エリア経営部 ストック活用企画課 課長の小川絵美子氏は「もともと東急が多摩田園都市エリアで掲げる『nexus構想』においてさまざまな協力を進めていた。一方でパナソニック ホールディングスから空中配送ロボットについての実証の話が東急にあり、その流れで3社で行う形となった」と述べている。
実証実験は川崎市麻生区のUR虹ヶ丘団地で2023年11月18日〜2024年3月31日の期間で月に6日程度の頻度で実施する。同団地内に10〜14mの電柱を10本建て片道約400mのワイヤを張り、空中配送ロボットのルートを作った。
まず、団地住民がスマートフォン端末から注文を行うと、待機しているパナソニック ホールディングス社員が荷物を受け取り空中配送ロボットに詰め込む。荷物を受け取ったロボットは団地中央に設置された受け取りボックス上空まで荷物を運び受け取りボックスにワイヤを伸ばして受け渡す。受け取りボックス内で指定の受け取り場所に振り分け、注文者はスマートフォン端末で認証を受け、荷物を取り出すことができるという流れだ。取り扱うのは東急ストアの商品で吉野家の牛丼なども扱う。注文から最短で30分で届けることができるという。
空中配送ロボットについてはパナソニック ホールディングスで開発した。ドローンでの配送に対し、墜落の心配がなく、静かで省エネ性が高い点などで利点があるとしている。静音性については55dBとしており、ドローンの90dBより静かで夜間配送なども可能だ。また、空中に浮かせるために動力を使う必要がないため省エネ性能にも優れており、1充電で約8時間稼働可能だ。受け取りボックスに正確に荷物を下ろすための位置決めについては、ロボット内に搭載したGPSとモーターの駆動制御、センサーによる支柱通過タイミングの把握を組み合わせ、随時修正しながら行っているという。
陸上配送用ロボットとの比較について、パナソニック ホールディングス 事業開発室 ESL研究所 主務の鷲見陽介氏は「空中をワイヤをつたって配送することで非常に速く配送することができる。食事のように急いで届けた方がよいものには空中配送ロボットが向いている。ただ使い分けの問題もある。ドアからドアへ届けるような作業は陸上配送ロボットが向いており、組み合わせて使う可能性もある」と述べている。
同サービスは当面は無料で行うが、有料化も検討し料金の妥当性の検証なども行う計画だ。鷲見氏は「空中配送ロボットに関する法律は存在せず、ルール作りなどについても参画し、利用環境を広げていく」と今後について語っている。
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