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2種類の発電デバイスを活用し、幅広い速度域で安定電力を得るタイヤ内発電技術:組み込み開発ニュース
住友ゴム工業は、タイヤの内側に静電気を利用した2種類の発電デバイスを取り付け、電力を幅広い速度域で安定的に供給することに成功した。実車による実験で、タイヤ空気圧監視システムの稼働を確認している。
住友ゴム工業は2023年10月11日、関西大学 教授の谷弘詞氏と共同で、タイヤの内側に静電気を利用した2種類の発電デバイス(エナジーハーベスト)を取り付け、電力を幅広い速度域で安定的に供給することに成功したと発表した。
同社はこれまでに、タイヤのゆがみの変化による張力を利用した、低速域での発電(発電デバイスA)を開発。これに加えて今回、加速度変化による遠心力を用いた発電デバイス(発電デバイスB)を適切に配置し、高速域でも相当量の電力を得ることに成功した。発電メカニズムの異なるこれらの摩擦発電デバイスを並列接続することで、幅広い速度域で安定した電力を得ることができた。
実車を用いた実験では、低速域から高速域まで安定したタイヤ空気圧監視システム(Tire Pressure Monitoring System:TPMS)の稼働を確認している。
こうしたタイヤ内発電技術は、センサーデバイスの電池寿命の課題を解決する手段となる。今後、タイヤセンシングの実用化が期待される。
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