タイヤの回転で摩擦発電するデバイス、TPMSの動作が可能:組み込み開発ニュース
住友ゴム工業と関西大学は、摩擦によって発生する静電気を利用した発電デバイス(摩擦発電機)をタイヤの内面に取り付けて、タイヤの回転に伴う振動によってワイヤレス信号を送信できるレベルの電力を発電できることを確認したと発表した。
住友ゴム工業と関西大学は2019年7月23日、摩擦によって発生する静電気を利用した発電デバイス(摩擦発電機)をタイヤの内面に取り付けて、タイヤの回転に伴う振動によってワイヤレス信号を送信できるレベルの電力を発電できることを確認したと発表した。同様にタイヤの内側に取り付けるTPMS(タイヤ空気圧監視システム)などセンサー類への電源供給としての応用が期待できるとともに、将来的にバッテリー不要のデジタルツールを活用したサービス創出にも貢献できるとしている。
関西大学システム理工学部 教授の谷弘詞氏は、摩擦によって発生する静電気を利用した発電やセンサーの開発に取り組んでいる。今回開発した摩擦発電機は、ゴム、帯電フィルム、電極から成り、柔軟かつ軽量のため、大きな変形あるいは大きな衝撃を受ける場所での発電が可能である。このため、タイヤの内面に取り付けてタイヤの回転によって発電する摩擦発電機に最適だという。実験の結果、回転中のタイヤが地面と接地するタイミングで発電が行われ、ワイヤレス信号を送信可能な電力を蓄電できることを確認した。
谷氏は、今回のタイヤの事例の他にも、靴に入れる発電インソールや、転がり軸受の運転状態モニタリングを行うための自己発電型摩擦帯電センサーなどへの技術展開も検討している。これらの摩擦帯電を活用した発電機やセンサーが実用化されれば、世界的にも新規な事例になるという。
住友ゴム工業は、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化する中「さらに高い安全性能」「さらに高い環境性能」を実現するためのタイヤ技術開発コンセプト「Smart Tyre Concept」を掲げている。そこでは、摩擦発電機が役立つであろう、デジタルツールを用いて得られるさまざまなデータを利用した新たなソリューションサービスの展開を目指している。
なお今回のテーマは、2018年10月にJST(科学技術振興機構)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)シーズ育成タイプFSに採択され、同機構の支援を受けながら開発が進められている。
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