騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜吸音について〜:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(17)(6/6 ページ)
“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第17回では、騒音低減技術の基本である「遮音」と「吸音」のうち、吸音について詳しく取り上げる。
吸音材
図9に吸音率の例を示します。A特性、つまり聴覚の特性から300[Hz]以上の音が対策の対象となります。厚さ25[mm]の吸音材の吸音率は300[Hz]で、0.3[-]くらいです。これでは足りませんね。ネット検索して「防音○○」という商品があっても、厚さがペラペラだったら効果が期待できません。300[Hz]の音だったら厚さ100[mm]の吸音材が必要になります。もし、1000[Hz]の音しかなかったら厚さ25[mm]の吸音材でも効果が期待できます。音の周波数を知っていないと、どれくらいの厚さの吸音材が必要なのかが分からないのです。連載第3回〜第5回で、くどいくらいに周波数分析の話をした理由はここにあります。
吸音率は素材の種類で決まるのではなく、多孔質形状と全体の厚さで決まるようです。連載第2回で、流体粒子が振動していると述べました。水力学では配管の断面積が急激に変化すると、流体に圧力損失が発生します。多孔質形状はこの圧力損失を発生させているのでしょうか。
吸音材の例としては、ガラス繊維(グラスウール)、連続気泡スポンジ、軽石のような形態の石こうボードなどがあります。グラスウールは触るとチクチクするのでガラス繊維製の布で覆ったものが市販されています。普通のスポンジは中の気泡がつながっていないので効果がなく、「連続気泡」と仕様書に明記して発注する必要があります。騒音計のマイクに黒い球状のスポンジを付けますが、これが連続気泡スポンジです。これらは高温環境では燃えてしまうので、例えば、燃焼音などに対しては軽石のような形態の石こうが必要となります。
吸音も書き出してみると長くなってしまいましたね。次回は、遮音について説明します。 (次回へ続く)
Profile
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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