騒音低減技術の基本「遮音」と「吸音」を理解する 〜吸音について〜:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(17)(5/6 ページ)
“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第17回では、騒音低減技術の基本である「遮音」と「吸音」のうち、吸音について詳しく取り上げる。
部屋の中の騒音レベル
図6のように、吸音材で囲われた部屋の中の音圧レベルを求めます。部屋の中は拡散音場とします。
観測点では直接音と反射音の和が観測されます。直接音は式18でした。拡散音場における反射音の音圧の実効値の二乗Pe2refは、導出に紙面を要しますが次式で表されます(参考文献[3])。
Rは「室定数」と呼ばれ、次式で定義されます。
等価吸音面積(吸音力)Aと室定数Rは混同しやすいので注意してください。この2つは遮音のところでも登場します。直接音と反射音の和は、振幅の足算ではなく実効値の二乗の足算となり、次式で表されます。
点音源が床にあった場合などは、直接音の広がる範囲が狭まるため、式24は次式のように書き換えられます。Qは図7のようになります。
音圧レベルは次式となります。騒音レベルは、音圧レベルに対してA特性のフィルターを通したものでしたね。
室定数Rは、吸音率αが大きくなるとそれに従って大きくなり、α→1[-]で無限大となります。数値を代入して考察してみましょう。図8に点音源の出力が0.1[W]の場合の音源からの距離と音圧レベルを示します。
黒色の太線は直接音です。図8のAの領域に注目してください。音源からの距離が1[m]を超えると音圧レベルが距離に関係なく一定値となります。そして、音圧レベルが室定数Rによって決まります。つまり、部屋の音圧レベルは壁に貼った吸音材で決まります。要するに“吸音材が有効な騒音対策手段”となります。図8のB領域に注目してください。何もありませんね。音源から近いと直接音が支配的なので、どれだけ大きな吸音率の吸音材を貼っても効果が期待できません。「どれだけ大きな吸音率」といっても吸音率の最大値は1[-]でした。
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