セコム8年ぶりの新型ドローンが掲げる“XX”の意義:ドローン(2/2 ページ)
セコムが、2代目となるセキュリティドローン「セコムドローンXX」を発表。画像AIを活用して巡回を行う機能を備える他、2015年12月発表の初代モデルから大幅な性能向上と機能拡張を図っている。
なぜセコムは早期からドローンの研究に取り組んできたのか
セコムは、2011年にセキュリティ分野でのドローン活用の研究に着手するなど、一般的にドローンと呼ばれる前の早期の段階からドローンに注目していた企業だ。上田氏は「今回の会見の会場である浦安ヘリポートは、当社が30年以上前から運用しているジェットヘリの発進基地となっている。このジェットヘリは、災害時のBCP(事業継続計画)や島しょのセキュリティなどに利用しているが、その運用の経験から“空から見る”ということの重要性を強く感じてきた。この“空から見る”を可能にする新しいい技術がドローンであり、当社は早期から提案してきたといえる」と強調する。
2012年12月には、小型飛行監視ロボットの試作機の記者発表会を行い、屋内でのデモンストレーション飛行を実施しており、研究は着実に進んでいた。ただし、セコムが求める夜間、雨天、操縦者なし、目視外飛行可能に対応する市販機体はなかったことから、自社開発を進めることになった。サービス開始の目標時期は2015年春としていた。
この2015年春とほぼ同時期となる同年4月に起こったのが首相官邸にドローンが落下した事件だ。この事件を契機に、それまでほぼ規制のなかったドローンに関する制度整備が加速することになる。セコムも政府から問い合わせを受けて、ドローンの新しい産業応用のユースケースとして情報提供に積極的に協力したという。
そして、2015年12月10日、ドローン関連制度を盛り込んだ改正航空法の施行日に発表したのが初代のセコムドローンである。無人地帯で、夜間、雨天、建物近くを補助者なしで目視外飛行する、いわゆるレベル3飛行が可能な日本発の商用ドローンサービスだった。
このセコムドローンの発表後には数百件の反響があったという。離陸から自律飛行、着陸、点検、充電まで全自動運用が可能なこと、夜間、雨天も飛行が可能な国産の機体、24時間365日の運用監視体制などに対しては高い評価が得られた。その一方で、耐風性能が平均風速5mと低いこと、飛行時間が最大10分、飛行可能距離が最大1.67kmと短いことは課題として指摘されていた。さらに、通信にWi-Fiが必要であり、飛行対象エリア全体にアクセスポイントを敷設するコストが極めて高かったため、利用できるユーザーが限られていた。
そして2018年、初代モデルで高い評価を得た特徴はそのままに最新技術を盛り込んで課題を解決し、防犯/警備にとどまらない周辺領域で活用できることを目指して開発した次期セコムドローンが、今回のセコムドローンXXとなる。
なお、セコムドローンXXは、初代モデルと同様にドローンの無人地帯における目視外飛行が可能なレベル3に対応しており、足元で話題となっている有人地帯における目視外飛行が可能なレベル4には対応していない。セコムとしては、セコムドローンXXによるレベル3での実績をしっかり積み上げながら、社会受容性などを見極めながら社会の安心、安全に貢献できるかを基に、長期的な視点でレベル4への対応を検討していく方針である。
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