連載
風車をモデリングする 〜風を電気エネルギーに変換する原理を起点に〜:1Dモデリングの勘所(24)(5/5 ページ)
「1Dモデリング」に関する連載。連載第24回は「風車」について考える。風車の構造と仕組み、風がパワーを生み出す原理、翼の発生トルクの算定方法、発電機の原理について説明し、これらを基に風車のモデリング、定式化、解析を行い、風車がどの程度のパワー(電力)を生み出すのかを算出し、考察する。
解析例と考察
前項の風車の性能に関する3つの式(式18、式19、式20)を「Modelica」でテキスト表現すると以下となる(リスト1)。ここでは、周速比λ=3、パワー係数Cp=0.3、翼長r=30m、増速比Gr=100とし、風速v=10m/sと15m/sについて解析した。
model windTurbine import Modelica.Constants.pi; Real P; Real A; Real T; Real Tg; Real OMGg; Real OMGm; Real I; Real V; Real Pc; parameter Real RAM=3; parameter Real Cp=0.3; parameter Real r=30; parameter Real v=15; parameter Real KT=2; parameter Real KE=2; parameter Real E=100; parameter Real Ro=1.29; parameter Real Gr=100; parameter Real R=0.033; equation P=(1/2)*Ro*A*v^3*Cp; A=pi*r^2; T= (1/2)*Ro*A*v^2*Cp*r/RAM; Tg=T/Gr; OMGg=(E/KE)+R*Tg/KE/KT; I=(KE*OMGg-E)/R; V=KE*OMGg; OMGm=OMGg*60/2/pi; Pc=Tg*OMGg; end windTurbine;
リスト1 Modelicaでテキスト表現した場合
リスト1を実行した結果、風速v=10m/sでの出力(パワー)は0.53MW、風速v=15m/sでの出力(パワー)は1.87MWであり、パワーはほぼ風速の3乗に比例している。
上記の解析に使用した風車を用いて“風車で自給自足する街”を考えると、図13のようになる。
このように簡単な解析で、例えば、エネルギー問題を定量的に考察することができる。なお、直径1mの小型風車について評価すると、出力は約100Wで稼働率を考えると実用的ではないことも分かる。 (次回へ続く)
筆者プロフィール:
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
- 研究会HP:https://1dcae.jp/
- 代表者アドレス:ohtomi@1dcae.jp
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 1Dモデリングの方法にもさまざまなアプローチがある
「1Dモデリング」に関する連載。連載第4回では、本題である1Dモデリングの方法を取り上げる。まず、1Dモデリングの方法には大きく「モデル生成」「低次元化モデリング」「類推モデリング」の3つのアプローチがあることを説明。特に本稿では1Dモデリング固有の考え方としての類推モデリングについて詳しく解説する。 - 0Dモデリングとは? 理論・経験に基づく理論式・経験則が究極の1Dモデリング!?
「1Dモデリング」に関する連載。連載第3回は、理論・経験に基づく理論式・経験則が究極の1Dモデリングであることを、0Dモデリングの定義、3Dモデリングとの関係、幾つかの事例を通して説明する。また、理論・理論式を考えるに当たって重要な“単位”に関して、なぜ単位が必要なのかその経緯も含めて紹介する。 - 1Dモデリングとは? モデリングをさまざまな視点から捉えることで考える
「1Dモデリング」に関する連載。連載第2回は、モデリングをその表現方法から2種類の“3つのモデリング”に分けて考える。次に1Dモデリングが必要となる背景について、1DCAEとMBDという2つの製品開発の考え方を紹介し、これらと1Dモデリングの関係を示す。さらに、リバース1DCAEと1DCAEを通して、より具体的に1Dモデリングのイメージを明らかにする。以上を通して、最後に“1Dモデリングとは”について考察する。 - モデリングとは何か? 設計プロセスと製品設計を通して考える
「1Dモデリング」に関する連載。連載第1回は、いきなり1Dモデリングの話に入るのではなく、そもそもモデリングとは何なのか? について考えることから始めたい。ものづくり(設計)のプロセス、製品そのものを構成する要因を分析することにより、モデリングとは何かを明らかにしていく。 - なぜ今デライトデザインなのか? ものづくりの歴史も振り返りながら考える
「デライトデザイン」について解説する連載。第1回では「なぜ今デライトデザインなのか?」について、ものづくりの変遷を通して考え、これに関する問題提起と、その解決策として“価値づくり”なるものを提案する。この価値を生み出す考え方、手法こそがデライトデザインなのである。 - デライトデザインとは? 3つのデザイン、類似の考え方を通して読み解く
「デライトデザイン」について解説する連載。第2回では、デライトデザインとは? について考える。まず、設計とデザインの違いについて触れ、ユーザーが製品に期待する3つの品質に基づくデザインの関係性にも言及する。さらにデライトデザインを実行する際に参考となる考え方や手法を紹介するとともに、DfXについて説明し、デライトデザインの実践に欠かせない要件を明確にする。