海中光技術を音波や電磁波と融合し社会実装へ、ALANコンソーシアムが新方針:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
ALANコンソーシアムが、同コンソーシアム発ベンチャーのアクアジャストの発足や、技術実装を推進するワーキンググループ(WG)の設立、中核企業のトリマティスが開発した水中フュージョンセンサーなどについて説明した。
2つの意味で「世界初」の水中フュージョンセンサー
会見では、トリマティスが開発した水中フュージョンセンサーも紹介された。RGB三色レーザー搭載LiDAR、LiDARとカメラを同時搭載しハードウェア的に融合しているという2つの観点で「世界初」のセンサーだという。
水中フュージョンセンサーは、MEMSミラーを用いてRGBのレーザー光によるラスタースキャンを行い、RGB3つの受光ユニットで反射光をセンシングするLiDARと、一般的な可視光の4Kカメラを組み合わせている。測定距離は1〜10m、精度は1cm以下、測定ポイント数は毎秒120万点、フレームレートは20fps、外形寸法は直径165×360mmである。
トリマティスが開発するLiDARは、2022年にMEMESミラーの採用で小型化を果たしていたが、養殖の用途などで求められる海中での魚の動きを細かく見られるレベルとなる測定ポイント数やフレームレートには性能が一桁不足している状態だった。今回、測定ポイント数が毎秒120万点、フレームレートが20fpsとなるとともに各フレームでカメラ画像の撮影までできるようになり、海中で魚の種類まで確認できるようなフラグシップの性能を実現できているという。
なお、水中におけるLiDARとカメラのフュージョンセンサーは、陸上と違ってどちらも可視光を使用するためカメラ画像にLiDARのレーザー光がノイズとして重畳されるという課題がある。今回の水中フュージョンセンサーでは、LiDARについてはMEMSミラーによるRGBレーザー光のラスタースキャンを行っており、このラスタースキャンの最後からRGBレーザー光の照射位置をゼロ点に戻すまでのLiDAR非計測時間にカメラ撮影を行うことで実現している。これによって、1フレーム内でLiDARとカメラの同時計測が可能になり、これまではリアルタイム処理が難しいとされてきた水中でのカメラの色調改善をLiDARの距離情報を用いて行えるようになるなどの効果が得られるという。
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