海中光技術を音波や電磁波と融合し社会実装へ、ALANコンソーシアムが新方針:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ALANコンソーシアムが、同コンソーシアム発ベンチャーのアクアジャストの発足や、技術実装を推進するワーキンググループ(WG)の設立、中核企業のトリマティスが開発した水中フュージョンセンサーなどについて説明した。
ALAN(Aqua Local Area Network:エーラン)コンソーシアムは2023年10月6日、オンラインで会見を開き、同コンソーシアム発ベンチャーのアクアジャストの発足や、技術実装を推進するワーキンググループ(WG)の設立、中核企業のトリマティスが開発した水中フュージョンセンサーなどについて説明した。アクアジャストは洋上風力発電システムの水中保守点検と大型船の簡易船底検査のシステム構築をターゲットに、2023年末からセンサーやロボットの開発を始める方針である。
JEITA(電子情報技術産業協会)の共創プログラム第1弾として採択された後、2018年6月に発足したALANコンソーシアムは、水中光無線通信、水中LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、水中光無線給電の3つのWGを中心に活動を続けてきた。参加団体数も2022年3月の26から31にまで増えている。同コンソーシアム 代表の島田雄史氏は「5年間の活動を経て、社会実装の議論を進める中で、海洋、海中の新事業を推進する会社の必要性を感じた。特に、ALANコンソーシアムの活動を通して見えてきた事業化のテーマが『水中環境の定量化・リアルモニタリング』だ。アクアジャストでは、ALANコンソーシアムで培ってきた技術を活用して、世界にない海洋/海中のデータ特化型の企業として活動を進めていきたい」と語る。
また、アクアジャストの事業化では、ALANコンソーシアムが注力してきた水中光機器の技術だけにこだわらず、音波や低周波電磁波、カメラなどの他技術との連携を重視して、海中/海洋でのセンサーやロボット、無線通信システムなどを早期に実用化していきたい考えだ。これまでALANコンソーシアムの活動をけん引してきたのは島田氏が代表取締役 CEOを務めるトリマティスであり、同社で事業化することも検討したが、「トリマティスは既に約20年の歴史があり水中機器は事業の一部にすぎない。本格的に水中機器の事業を推進するには、別の企業を立ち上げる必要があった」(島田氏)という。
アクアジャストは2023年末から活動を本格化し、「Wireless Aqua Robo System as a Service(WARSsaS)」を事業コンセプトに、まずは既存のAUV(自律型無人潜水機)やROV(遠隔操作型無人潜水機)などにセンサーを搭載して海中構造物検査や海中環境計測を行う事業の検討を始める。2024年中ごろには、洋上風力発電システムの水中保守点検と大型船の簡易船底検査向けを中心に、水中ロボットの独自開発を進めていく方針である。
ALANコンソーシアムの組織体制でも、これまでの技術研究WGに加えて技術実装WGが発足しており、より社会実装を意識した体制に移行しつつある。ALANコンソーシアム 実行委員会委員長で産業技術総合研究所 エレクトロニクス・製造領域領域長補佐の森雅彦氏は「技術研究WGの中でもロボティクス&プラットフォームのチームでは、水中光機器にこだわらずさまざまな技術を活用しており、技術実装WGは環境計測や構造物検査、養殖といった用途に合わせてさらに広い視野で技術の取り込みを図っている」と説明する。島田氏も「ALANコンソーシアムの活動で、かつては使い物にならないと見られていた水中光機器の技術を認めてもらえるようになった。これからは、音響や電磁波、カメラなど他の技術を組み合わせて、海中/海洋の事業を実現していくことが重要だ」ときぃう長する。
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