シャープや三菱電機などのIoT家電で高齢者を見守り、石川県能美市でサービス開始:製造業がサービス業となる日
石川県能美市は、シャープ、三菱電機、AIoTクラウドの協力で、能美市在住の見守りを必要とする高齢者を、IoT家電を使用することで遠隔で見守ることができる「IoT高齢者見守りシステムサービス」の構築を開始し、2024年にサービスを開始することを発表した。
石川県能美市は2023年10月2日、シャープ、三菱電機、AIoTクラウドの協力で、能美市在住の見守りを必要とする高齢者を、IoT家電を使用することで遠隔で見守ることができる「IoT高齢者見守りシステムサービス」を構築し、2024年にサービスを開始することを発表した。
能美市は東西の広範囲にわたり市民が居住する地域環境のため、高齢者や要介護者の孤立リスクが懸念とされており、デジタル技術を活用してこれらの課題解決を推進する「能美スマートインクルーシブシティ」を推進している。その一環として今回構築を推進するのが、IoT家電を活用した見守りサービスである「IoT高齢者見守りシステムサービス」である。
IoT高齢者見守りシステムサービスは、見守り対象者の家に室温や湿度などを測定する複数のセンサーを搭載したIoT家電を設置し、機器の使用状況や室内環境などのデータを自動で取得する。そのデータを解析し、推定した宅内状態を関係機関や支援者が把握することで、早期の段階で見守り対象者の生活状況の変化に気付き、室内温度環境による体調不良などの恐れがある場合に発見が遅れるリスクを低減する。
2023年10月〜2024年1月にかけてシステム開発と評価を行い、2024年1〜3月にかけて家電の設置と試験運用を行う。2024年4月以降に本番運用を行う計画だ。当初は対象となる一人暮らしの高齢者と障害者の中から100世帯を選び、IoT家電の納入も能美市で行って進めるという。対象となるIoT家電は、シャープの空気清浄機と三菱電機のエアコンとなる。2025年4月以降には高齢者や障害者だけでなく対象を全世代に置いた運用を開始する計画だ。能美市 市長の井出敏朗氏は「最初の100台のIoT家電は市で負担し、調査分析を行う。その結果を受けて今後の機器料金や通信費用などのビジネスモデルを検討していく」と述べている。
今回のIoT高齢者見守りシステムサービスのシステムとしての特徴が、電子情報技術産業協会(JEITA)とエコーネットコンソーシアムが手掛けるプラットフォーム「イエナカデータ連携基盤」とエコーネットコンソーシアムが推進するメーカー共通API規格「ECHONET Lite Web API」を活用し、同規格に対応していればどのメーカーのIoT家電でも情報の収集が可能であることだ。複数メーカーのIoT家電を対象とした高齢者見守りシステムは「国内で初めて」(シャープ)だとしている。
システムとしてはまずECHONET Lite Web API対応のIoT家電から、同規格を活用して情報を収集し、イエナカデータ連携基盤に収納する。ここで高次化処理を施し在宅情報や周辺情報など見守りにつながる情報を抽出できるようにする。ここからさらに能美市の汎用連携システムへと接続し、能美市の基盤システムなどを経由して、関係機関や支援者へと見守りに関する指示やアラートなどを送るようにする。「それぞれの基盤ごとにセキュリティやプライバシーの保護を行う仕組みを組み込んでおり、ブロックごとにプライバシーを守っていく。それぞれの対象者の知らないところでデータが流れることはない」とシャープ Smart Appliances & Solutions事業本部 グローバル新規事業推進統轄部 AIoT事業推進部 部長の長沢忠郎氏は語っている。
また、当初の100世帯の見守りについては、現在1カ月に1回のペースで実際に見守りを行っている地域の民生委員や児童委員に対し、市から配布したタブレット端末に通知を行うことで、柔軟な対応などを可能とすることを想定しているが、今後対象家庭が増え、通知先が増えることになると、本人認証などの工夫も必要になる。その点について、AIoTクラウド シニアフェローの白石奈緒樹氏は「実際の見守りを行っていくためには、通知先となる関係者に対する本人認証が必要になる。その点については、マイナンバーカードを利用するなど、ふさわしい認証方法を検討していく」と考えを述べている。
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