新製品は声やスマホで動かすIH調理器、三菱電機が描くキッチン家電IoTの価値創出:メイドインジャパンの現場力(37)(1/3 ページ)
三菱電機はキッチン家電などのIoT化に対する説明会を三菱電機ホーム機器で開催し、併せて開発中のIHクッキングヒーターや生産ラインを報道陣に公開した。
三菱電機は2023年3月3日、キッチン家電などのIoT(モノのインターネット)化に対する説明会を三菱電機ホーム機器(埼玉県深谷市)で開催し、開発中のIHクッキングヒーターや生産ラインを報道陣に公開した。
三菱電機ホーム機器は三菱電機から分離、独立する形で1984年に設立され、ジャー炊飯器の製造などをスタートした。
現在は分工場にあたる藤岡工場(群馬県藤岡市)との2拠点体制で、IHジャー炊飯器やIHクッキングヒーター、食器乾燥機、ビルトイン 食器洗い乾燥機などのキッチン家電に加えて、掃除機や空気清浄機、布団乾燥機など、三菱電機ブランドの白物家電の企画、開発から製造、アフターサービスまでを担っている。製品はほぼ国内向けに供給しているが、除湿器は半分を台湾、韓国へ輸出している。
直近では、グリルに電子レンジを搭載したIHクッキングヒーターレンジグリルIH「RE-321SR」を開発、2021年に発売した。RE-321SRでは、基板の半導体素子やその動かし方、冷却風路を最適化することで、ヒートシンクの高さを従来の3分の1程度に抑えることに成功、高さを抑えたことで空いたスペースに電子レンジを埋め込んだ。
現在、IoT機能を搭載したIHクッキングヒーターレンジグリルIHも開発中だ。スマートスピーカーを通した音声操作や、スマートフォンの専用アプリケーションによる遠隔設定が可能になる。
例えば、「レンジグリルのメニューは何にしますか」とのスマートスピーカーの問いかけに「オーブンで160℃、40分」と答えるとその通りに設定できたり、専用アプリケーションに表示されたレシピの設定をそのままIHクッキングヒーターに送信して設定したりできるようになる。
デモンストレーションでは、スマートスピーカーから「火力またはIHのメニューは何にしますか」と聞かれ、料理レシピサイト「Nadia」でNadia Artistを務める料理研究家の西岡麻央氏が「火力は5、タイマー4分」と伝えると、その通りの設定に成功した。
ただし、音声操作、遠隔操作ともに設定が可能になるだけで、実際に調理がスタートできるわけではない。国際規格である「IEC 60335-2-6」で定められており、安全性を考慮して本人がスイッチを押すことで初めて設定に沿って動作する。新製品は早ければ2023年に市場投入する。
近年、国内のIHクッキングヒーターの市場規模は2010年まで右上がりで伸び続けてきたが、2011年の東日本大震災を機に伸びが止まり、現在は年間80万台前後で推移しているという。シェア首位はパナソニックで三菱電機は3番手につける。
三菱電機ホーム機器 代表取締役社長の栗崎一浩氏は「コロナ禍で家庭で過ごす時間が長くなり、家族と一緒の食事や団らんの時間を大切にしたいという要望に対して、IoTを活用して料理のレシピを表示したり、使いやすくしたりする製品でお応えしようと開発している商品となっている。一人一人の暮らしに寄り添いながら、ユーザーのお困りごとを解決するモノと、ソリューションといわれるコトを、IoTとデジタルを使いながら提案していきたい」と語る。
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