ニュース
アニオン組成を制御し、無機機能性材料の特性を向上させる新技術:材料技術
東北大学は、外部から電圧を加えることで、対象となる無機機能性材料のアニオン(陰イオン)の組成を容易に制御する技術を開発した。同技術により、従来は不可能だった反応条件での材料合成が可能となる。
東北大学は2023年9月11日、外部から電圧を加えることで、対象となる無機機能性材料のアニオン(陰イオン)の組成を容易に制御する技術を開発したと発表した。九州大学、東京都立大学との共同研究による成果だ。
無機機能性材料は、陽イオンのカチオンと陰イオンのアニオンから成るセラミックスだ。科学技術を支える重要な基盤材料として注目されており、従来はカチオン組成を制御することで、高機能化が図られてきた。
今回の研究では、電気化学を材料合成に応用し、アニオン組成を容易かつ幅広く制御する技術を開発している。外部から電圧を印加し、電解質のイオンを駆動して任意量のアニオン種を対象材料に注入することで、アニオンを組成する。注入するアニオン量は電流量で制御でき、従来は不可能だった反応条件での材料合成が可能となる。
ペロブスカイト型酸化物(La、Sr)CoO3の酸素の一部をフッ素(F)に置き換える実証実験では、任意量のフッ素を粒子内部まで注入できた。また、大電圧を印加して大きな駆動力で反応を進めた結果、通常の合成条件では出現しないナノ結晶を含む準安定相が合成できた。
これらの成果により、アニオン組成の精密な制御と極限的な反応条件での新材料探索が可能になる。新たなアニオン組成制御型機能材料の創出につながることで、燃料電池や蓄電池などの高効率エネルギーの変換、貯蔵技術への応用が期待される。
関連記事
- 燃料電池の内部の水を可視化、実機サイズのセルで撮像時間は1秒
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2022年7月12日、パルス中性子ビームによる車載用燃料電池セル内部の水の可視化に成功したと発表した。パルス中性子ビームを用いて実機サイズのセル内部の水挙動を明らかにするのは「世界初」(NEDO)だとしている。 - 燃料電池で液体有機水素キャリアを直接利用、シェフラーなどが共同開発へ
シェフラーは2022年1月28日(現地時間)、ハイドロジーニアス LOHC テクノロジーズやヘルムホルツ研究所と協力に合意し、液体有機水素キャリア(LOHC)を使用した燃料電池を開発すると発表した。 - ローソンとファミマが燃料電池トラック導入、トヨタいすゞ日野が車両開発
ローソンとファミリーマートは2021年8月10日、小型トラックタイプの燃料電池車(FCV)による走行実証を開始すると発表した。 - 燃料電池工場の電力を燃料電池でまかなう、パナソニックが「世界初」の実証施設
パナソニックは2022年4月15日、同社の草津事業所で、純水素型燃料電池などによって、工場消費電力を再生可能エネルギーで100%まかなうための実証施設「H2 KIBOU FIELD」の稼働を開始した。自家発電燃料として水素を本格的に活用し、工場の稼働電力をまかなう実証としては「世界初」(パナソニック)の試みだという。 - ジェイテクトが直接ギ酸形燃料電池を開発、メタノール燃料電池の出力を上回る
ジェイテクトは、人工光合成によって生成される材料の一つであるギ酸を燃料に用いる直接ギ酸形燃料電池について、国内初の50W級機能実証機を開発したと発表。同社はこの直接ギ酸形燃料電池を「J-DFAFC」と名付け、脱炭素やカーボンニュートラルへの貢献に役立てたい考えだ。 - ニッケル亜鉛電池がニッケル水素電池を置き換える!? 日本触媒が新材料を開発
日本触媒は、「第5回国際二次電池展」において、ニッケル亜鉛電池の負極材料として利用できる新開発のアニオン伝導層一体型亜鉛電極を展示した。ニッケル亜鉛電池の最大の課題だった亜鉛電極上でのデンドライトの成長を抑制し、サイクル寿命を大幅に伸ばせることを特徴としている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.