検索
ニュース

ハンドルを取られる路面の穴を高精度に検知、東芝が高速道路向けAIモビリティサービス(2/2 ページ)

東芝と東芝デジタルソリューションズは高速道路の路面の穴をリアルタイムかつ高精度に検知する「路面変状検知AI」を開発した。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

東芝のアプローチ

 点検員が使用するパトロールカー前方にカメラを搭載し、収集した画像を基にAIがリアルタイムにポットホールを検出、通報できれば、点検品質を平準化するとともに、点検員の安全確保、緊急補修までの時間短縮が可能になる。ただ。従来の学習方式では、大量の学習用画像に画素単位で変状位置を教示する必要があり、学習データの作成にかかる時間や学習データと異なる変状や道路への対応が難しかった。検知漏れや誤検知が大量発生するなど精度にも課題があった。

 東芝と東芝デジタルソリューションズが開発した路面変状検知AIは、画像内の各画素の変状度合いから変状の有無と変状箇所を推定する弱教師学習型のAI技術だ。変状位置を画素単位で教示することが不要で、変状の有無を選別して学習するだけでよい。入力された画像に対して異常スコアマップを出力する深層モデルを用いて、異常スコアマップの最大値と入力画像の変状有無が一致するように学習させることで、正常画像と異常画像の異なる部分(変状部分)のスコアが大きくなるようにした。

 弱教師学習型AIは、東芝社内で工場の良品検査に活用してきた実績がある。工場のように画像データの撮影環境がコントロールされていれば弱教師学習を適用しやすかったが、道路は周囲の状況を含めて撮影環境の変化が大きいことがハードルとなったという。


路面変状の有無だけを教えるだけで、変状の位置まで検知する[クリックで拡大] 出所:東芝

変状のある部分でスコアが高くなるように学習させる[クリックで拡大] 出所:東芝

 東芝と東芝デジタルソリューションズは2022年9月からNEXCO中日本 伊勢原保全・サービスセンター内の新東名高速道路と東名高速道路などで路面画像のデータを収集し、NEXCO中日本の知見を基にポットホールの有無のみを選別した学習データを作成した。

 この学習データを用いて追加学習したポットホール検知モデルを用いることで、検知精度(ROCAUC、異常検知アルゴリズムの評価指標)は一般道の画像で学習した汎用道路モデルの61.25%から84.22%に向上した。また、路面外の過検出を従来の77%から4%に抑えるとともに、時速80〜100kmで走行しながらポットホールの可能性がある箇所をリアルタイムに検知し、道路管制センターに通報できることを確認した。パトロールカーに搭載したノートPCで動作することも確かめた。

 さらに、運用中に得られた路面変状、異なる天気や季節、補修後や新規路線などの画像データを追加して学習することで、異なるタイプの路面変状やさまざまな道路状況にも対応できるという。

 東芝と東芝デジタルソリューションは今後もNEXCO中日本と実証実験を進めて、緊急補修が必要なポットホールの検出精度をさらに向上させる。路面変状以外の他の日常点検項目にも適用を拡大していきたい考えだ。NEXCO中日本以外の高速道路会社やインフラ事業者、自治体に提案していく。インフラ事業者は点検記録データを持っているため、路面変状検知AIを応用した点検自動化を取り入れやすいとみている。

→その他の「モビリティサービス」関連記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る