もはや電力線通信にとどまらないHD-PLC、パナソニックがNessumにブランド変更:製造業IoT(2/2 ページ)
パナソニック ホールディングスは、これまで高速電力線通信技術として展開してきた「HD-PLC」のブランド名を「Nessum(ネッサム)」に変更すると発表した。
HD-PLCあらためNessumは「画竜点睛の通信規格」に
HD-PLCあらためNessumは、小川氏が「画竜点睛の通信規格」と言うように、トンネルなど無線が使えない場所での通信や、既設ビルのインフラを活用したスマート化、高速無線通信が難しかった水中や海中など、これまでつなげられなかった場所をつなげてスマート化を可能にすることを特徴としている。荒巻氏は「有線LANやWi-Fiなどと競合するのではなく、これまでの通信技術で『できない』を『できる』にするもので、共存していくことになる」と説明する。
Nessumの採用事例としては、パナソニックグループが草津事業所(滋賀県草津市)に設けた純水素型燃料電池などで工場消費電力を再生可能エネルギーで100%まかなうための実証施設「H2 KIBOU FIELD」が挙げられる。純水素型燃料電池、太陽光発電システム、蓄電池、水素タンクなどの各システム間の通信をNessumで行うことで、有線LANと比べてネットワーク施工費を20〜50%削減できた。この成果を基に、2024年にはNessum搭載の純水素型燃料電池をリリースする予定だ。
重要インフラの通信を手掛けるGE CIC(Critical Infrastructure Communications)は、欧州のスマートグリッド向け通信機器のラインアップにNessumの採用を決定している。これまでもグリッド間通信にPLCが用いられていたが、マルチホップ機能により長距離通信が行えることが評価された。このことをきっかけにGE CICは、HD-PLCアライアンスにも参加し、IEEE P1901cの作業部会にも加わっている。
これらの他にも、ビル内HVAC(暖房、換気および空調)システムのスマート化、個人宅用太陽光発電パネルのスマート化、低コストでの工場のスマート化、地価のLAN工事が困難なガソリンスタンドのスマート化、スマート街路灯ソリューションなどにもNessumが採用されている。
ここまで紹介した採用事例は有線通信のNessum WIREであり、Nessum AIRについてはこれから採用提案を強化していくことになる。既に、NICT(情報通信研究機構)の「Beyond 5G 研究開発促進事業 令和3年度新規委託研究」の一般課題として、「海中・水中IoTにおける無線通信技術の研究開発」に採択されているが、この実証実験における4mで1Mbpsの通信と、マルチホップによる10mへの拡張が評価され、IEEE P1901cの通信媒体に海中が組み込まれることになった。
会見では、EV(電気自動車)向けのワイヤレス充電ステーションでの利用が最適なことを示すデモンストレーションを披露した。Nessum AIRによってEV−充電スタンド間での無線の混信が起こらないだけでなく、Nessum WIREで充電ステーション内にある複数の充電スタンドの配線工事を低コストに抑えられることが示された。
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