スマート工場で再び脚光を浴びるか、HD-PLCの取り組み:スマートファクトリー
パナソニックは、CPS/IoT展「CEATEC JAPAN 2016」で、HD-PLC関連技術を出展。従来は家庭向けの通信技術として注目を集めていたが、新たな技術を組み込むことで工場などB2B向け機能を充実。IoTを活用したスマート工場化の流れで訴求を強めていく。
パナソニックは、「CEATEC JAPAN 2016」(千葉市、幕張メッセ、会期:2016年10月4〜7日)で、HD-PLC関連技術を出展。従来は家庭向けの通信技術として注目を集めたが、新たな技術を組み込むことで、工場などB2B向けの訴求を強める方針を明確にしている。
電灯線通信技術の1つである「HD-PLC」は家庭内などに通っている電灯線を使って、通信を行えるという通信技術である。新たに通信用の回線を通す必要がなく、家庭などのコンセントに対応機器を接続するだけで通信が行えるということが特徴で、特に家庭用の部屋間の映像伝送技術として注目を集めた。2000年に開発がスタートし、2006年に国内規制の緩和により、家庭向け製品が発売されたが、Wi-Fiなどの普及もあったことで、大きく普及を伸ばすことができなかった。
ただ2010年にIEEEやITU-Tなどの国際規格認定を取得したことなどから、海外を中心にB2B用途での利用が拡大。特にアジアなどを中心にビルや工場などにおける制御やスマート化などに活用する動きが広がりを見せてきたという。
こうした背景から、B2B用途でのニーズに合わせ技術開発を強化。新たに「マルチホップ機能」などを加えたIPコアライセンスを提供するなど、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を背景とした新たな価値訴求を進めている。
B2B向けで生まれ変わるHD-PLC
B2Bでの利用に際し、取り組んできたのが「大幅な通信性能の向上」と「規格化とマルチベンダー化」と「マルチホップ中継機能」の3つの点である。
通信性能については、電力線の状態に合わせる伝送路推定技術の導入やノイズキャンセル技術、多重化技術を組み合わせることで、ノイズの影響度を大幅に低減することに成功した。規格化とマルチベンダー化については、国際標準規格「IEEE 1901」として認定を受けたことがポイントである。これにより、相互接続認証を行い、認証ロゴを発行。パナソニックがIPコアを開発し、LSIメーカーにライセンス提供を行うようになった。
さらにビルや工場などの利用において、大きな進化がマルチホップ中継機能である。従来のHD-PLCは接続機器の台数が14台程度にとどまっており、接続範囲が限られていた状況だった。しかしマルチホップ機能により、各機器で通信の中継が行えるようになり、通信範囲を大幅に拡大することに成功した。最大10ホップ、1000台の接続が可能になり、伝送範囲は従来は数十から100mクラスだったのに対し、数kmクラスの伝送が可能となっている。今までは一般家屋程度の利用でなければ難しかったが、規模によっては、ビルや工場全域の通信環境をカバーできるようになったという。
第4次産業革命などが大きな注目を集める中、既存設備のネットワーク整備は工場や建築物にとって大きな課題となっている。しかし、これらの既存環境の全てにおいて新たな配線を通したり、無線通信環境を構築したりするには、コスト面や技術面などでも大きな負担となりかねない。その中で、既存の配線を利用可能であることによる導入コスト抑制、通信の安定性、電力消費の抑制などにつながるHD-PLCは、再び注目を集める存在になりつつあるといえる。
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