重量エネルギー密度300Wh/kgの全固体電池セルを開発:組み込み開発ニュース
ソフトバンクとEnpower Japanは共同で、全固体電池セルで重量エネルギー密度300Wh/kgの実証に成功した。この数値は、従来のリチウムイオン電池セルの最高値と同等となる。
ソフトバンクは2023年8月24日、Enpower Japanと共同で、全固体電池セルで重量エネルギー密度300Wh/kgの実証に成功したと発表した。
両社は、IoT(モノのインターネット)機器や携帯電話の基地局向けに、エネルギー密度が高く、大容量で軽い次世代電池の開発を進めていた。
リチウムイオン電池はイオン伝導体に有機電解液を用いるが、全固体電池は固体電解質を使用するため、電解液の発火や液漏れなどのリスクが低く、安全性が高い。また、固体電解質は電解液と比べて物質が安定しており、寿命特性や温度特性の向上、作動電圧範囲の拡大などが期待されている。
全固体電池には課題もある。固体電解質の場合、液体とは違って正極活物質−電解質の界面の密着性が低いことや、イオン伝導に関わる界面抵抗の増加により、電池容量の減少、出力特性や寿命特性の低下を起こしやすい。また、全固体電池に使われる固体電解質は、電解液と比較して比重が大きいため、電池が重くなり、現在のリチウムイオン電池と比べて重量エネルギー密度が低くなる傾向があった。
今回の技術開発では、全固体電池の課題を克服し、正極−固体電解質層の界面抵抗の低減や、正極合材中の固体電解質の重量比削減、固体電解質層の薄膜化などに成功。リチウム金属負極を用いた全固体電池セルを作製し、重量エネルギー密度を300Wh/kgまで向上させた。この数値は、従来のリチウムイオン電池セルの最高値と同等となる。
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