Ansysが中長期テクノロジー戦略として掲げる5つの柱と主要アップデートを解説:CAEニュース
アンシス・ジャパンは2023年8月25日、記者説明会を開催し、シミュレーションソフトウェアの最新バージョン「Ansys 2023 R2」の主要アップデート情報と同社の中長期テクノロジー戦略について発表した。
アンシス・ジャパンは2023年8月25日、記者説明会を開催し、シミュレーションソフトウェアの最新バージョン「Ansys 2023 R2」の主要アップデート情報と同社の中長期テクノロジー戦略について発表した。
説明会の冒頭、米Ansys プロダクト・マネジメント担当バイスプレジデントのSteve Pytel(スティーブ・パイテル)氏は、同社が中長期テクノロジー戦略として掲げる5つの注力分野「数値計算」「HPC(高性能計算)」「AI(人工知能)/ML(機械学習)」「クラウド&エクスペリエンス」「デジタルエンジニアリング」について取り上げ、これらを柱に製品アップデートや製品ポートフォリオの拡充に努めていることを紹介した。
「数値計算の継続的な発展は顧客がAnsysに最も期待する領域であり、解析時間の短縮を図る上でHPCの存在が重要なものとなる。CPUだけでなく、GPUを活用したシミュレーションの高速化に取り組む他、将来に向けて、量子コンピュータによるシミュレーションの高速化に関する研究開発も進めている。またAI/MLへの期待はシミュレーションの世界でも大きく、AnsysとしてはAIでエンジニアの仕事をいかに効率化できるかが重要だと考える。直近では顧客のトレーニングや学習を支援する多言語対応のAIバーチャルアシスタント『AnsysGPT』に関する発表を行っている」(パイテル氏)
また、最新テクノロジーを含む同社ソリューションを展開するための方法として、柔軟性と拡張性に優れたクラウドがキーになるとし、その有用性についてパイテル氏は「顧客はより効果的にコラボレーションし、企業内でより迅速なイノベーションを生み出すことができる」と述べるとともに、シミュレーションを設計プロセスの早期に組み込んで設計力を強化するデジタルエンジニアリングの重要性も説く。
Ansys 2023 R2では、以上の注力分野を柱とする製品アップデートが図られており、膨大な数の新機能の追加や機能強化が含まれるという。説明会ではそのうち代表的な新機能/機能強化ポイントに絞って説明が行われた。
数値計算の強化に関しては、3D IC(3次元集積化)技術などにより高度化/複雑化する製品設計を効率化する電気−熱ソリューションを提供する他、GPUソルバー/HPCによるシミュレーションの高速化、AI/MLを活用したシミュレーション時間の予測や解析パラメーター設定支援などの機能を提供する。
さらに、顧客がAnsysのテクノロジーを簡単に活用できるようプログラミング言語「Python」を中心としたエコシステムの構築や、安全性分析に関する新機能の提供などもAnsys 2023 R2のアップデートに含まれるという。
Ansys 2023 R2の製品アップデートうち、パイテル氏は安全性分析に関する機能強化にフォーカスし、フォルトツリー解析(故障の木解析)のパフォーマンス向上、既存のデスクトップクライアントを置き換える新しいDigital Safety Manager(DSM) Webアプリケーションの提供、Safety Platformの立ち上げなどの項目について触れ、「新バージョンのうち、安全性分析に関する機能強化は日本市場にとって非常に興味深く重要な内容となる」(パイテル氏)と説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 多言語対応のAIバーチャルアシスタント限定β版をリリース
Ansysは、多言語対応のAIバーチャルアシスタント「AnsysGPT」限定β版のリリースを発表した。1つの包括的なツールにAnsysの公開データを学習させて実装し、製品や関連する物理学、技術的な質問へ回答する。 - SDV時代を見据えた自動車開発の在り方とAnsysによる価値提供
アンシス・ジャパンは「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」の開催に併せ、「SDV(Software Defined Vehicle)シフトに対応する車両開発の在り方」に関する記者説明会を実施した。 - AnsysとMicrosoftが協業拡大、Azure上でのAnsysシミュレーションの可用性を向上
Ansysは、Microsoftとの協業を拡大し、クラウドサービス「Microsoft Azure」上でのAnsysシミュレーションソリューションの可用性を高めると発表した。 - シミュレーションソフトの最新版を発表、性能向上と高速化で開発を支援
Ansysは、シミュレーションソフトウェアの最新版「Ansys 2023 R1」を発表した。クラウド関連の新オプションとマルチGPUの最適利用により、これまで以上に複雑な製品のシミュレーションを高速で実行できる。 - 次世代無線通信製品の開発を効率化するシミュレーションツールを提供
アンシス・ジャパンは、村田製作所と新たな複数年契約を締結した。Ansysのマルチフィジックスシミュレーションツールが、村田製作所の次世代ワイヤレス通信、移動体製品向け電子部品の開発を効率化する。 - 予測不可能な時代、シミュレーションによる“確かさ”の獲得がより重要に
アンシス・ジャパン主催のオンラインイベント「Ansys Simulation World 2022 - Japan」(開催日:2022年9月28日)のキーノートセッションに、Ansys 社長兼CEOのAjei Gopal氏が登壇し、「確信をもって飛躍へ」をテーマに、製品開発におけるシミュレーションの重要性やAnsysのビジョン、競合優位性などについて説明した。