予測不可能な時代、シミュレーションによる“確かさ”の獲得がより重要に:Ansys Simulation World 2022 - Japan
アンシス・ジャパン主催のオンラインイベント「Ansys Simulation World 2022 - Japan」(開催日:2022年9月28日)のキーノートセッションに、Ansys 社長兼CEOのAjei Gopal氏が登壇し、「確信をもって飛躍へ」をテーマに、製品開発におけるシミュレーションの重要性やAnsysのビジョン、競合優位性などについて説明した。
アンシス・ジャパン主催のオンラインイベント「Ansys Simulation World 2022 - Japan」(開催日:2022年9月28日)のキーノートセッションに、Ansys 社長兼CEOのAjei Gopal(アージェイ・ゴパール)氏が登壇し、「確信をもって飛躍へ」をテーマに、製品開発におけるシミュレーションの重要性やAnsysのビジョン、競合優位性などについて説明した。
コロナ禍、サプライチェーンの混乱でシミュレーションの重要性を再認識
講演の冒頭、ゴパール氏は「製品開発にシミュレーションを活用することで、例えば、自社の製品が予測通りに、あるいはそれ以上に正確に動作するという確信が得られる。Ansysは将来における確信、未来の予測に役立つ高精度なシミュレーション環境を提供し、顧客企業が思い込みではなく、確信をもって飛躍するためのサポートを行っている」と述べ、シミュレーション活用の重要性とAnsysの価値提供について強調。実際に、経験や勘、知識に基づく机上の推測ではなく、Ansysのシミュレーションソリューションを日常的に活用し、確信をもって製品開発に取り組んでいる企業の一例として、ゴパール氏はInfineon Technologies、LG Electronics、Johnson & Johnson、Strykerを紹介した。
さらに、シミュレーションの重要性をあらためて実証した出来事として、ゴパール氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを挙げる。ロックダウン(都市封鎖)や外出自粛などの影響で、設計者やエンジニアが勤務先のテスト施設を利用できなくなったことで、製品の開発と検証のためにシミュレーションを活用する動きが加速。それに併せて、クラウドでのシミュレーション利用ニーズも急増したという。「このような動きが加速する中、Ansysは真のビジネスパートナーとして、あらゆるステップにおいて設計者やエンジニアを支援してきた」(ゴパール氏)。
また同様に、グローバルサプライチェーンの混乱、半導体不足や部材の高騰などの影響によって、企業はビジネスへの取り組み方や製品開発の在り方などを根本から見直そうとしており、デジタルの活用、シミュレーションによって、検討や計画、意思決定に役立てようとする動きも生まれているという。
あらゆるニーズに応える包括的なシミュレーションソリューションを提供
そして、Ansys自身も従来の狭い意味でのシミュレーションの位置付けから脱却することを選択しており、「1970年の創業当時は構造シミュレーションの企業だったが、現在はビジョンをさらに広げ、業界で最も包括的なシミュレーションポートフォリオを提供するに至っている。これにより、顧客は製品の構築で使用される材料から物理的特性がその動作に与える影響まで、最小のコンポーネントから最大のシステムまで、単純な装置の設計からミッション全体の複雑な細部まで、あらゆるものをシミュレーションすることができる」(ゴパール氏)。
一方、ユーザーの観点では、従来は高度な製品開発を行う専門の解析担当者のみがAnsysのシミュレーションソリューションを使用していたが、近年では、設計者やエンジニアでもシミュレーションを利用できるように、使いやすいワークフローや直感的なユーザーインタフェース(UI)などの開発にも注力しており、シミュレーション利用の裾野を広げているという。
さらに、シミュレーション環境を取り巻くテクノロジーの進化も、Ansysのシミュレーションポートフォリオの拡充に寄与している。ゴパール氏は「Ansysは、豊富な技術や技法を組み合わせることで、シミュレーションの役割を広げている。クラス最高の物理ソルバーとマルチフィジックスソルバー、日々改良を続けている解析技術の他、CPU/GPU双方で市場をリードするHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)機能による拡張性。そして、AI(人工知能)/機械学習、数学的なアナリティクスやモデリングの強力な機能などもソリューションに組み込み、あらゆるシミュレーションニーズに応える。また、オンプレミス/クラウドの両面で展開し、柔軟性をもって顧客にとって最適な方法を選ぶことができる」と述べる。
シミュレーションはオプションではなく、不可欠なものへ
市場競争の面では、スタートアップの台頭や従来の競合企業からのプレッシャーもより厳しいものになるとともに、市場からの期待や需要もこれまで以上に高まっていくことが予想されるため、「シミュレーションはオプションではなく、不可欠なものへと変化した」と、ゴパール氏はシミュレーション活用の重要性が増していることを指摘する。それも単純なシミュレーション環境ではなく、「真のマルチフィジックス、クラウドを活用した計算リソース、API(Application Programming Interface)、AI/機械学習の活用が求められる」(ゴパール氏)とし、包括的なシミュレーションソリューションを創出するAnsysであればそうしたニーズに応えられると強調する。
こうしたAnsysの包括的なシミュレーションソリューションは、高度な技術力によって実現されるものであり、従来よりも優れたシミュレーションを可能とし、より高い価値を提供するという。そして、その対象範囲は製品開発にとどまらず、プロセス、意思決定などあらゆるシーンに広がり、これまで得られなかった知見の獲得につながっていくとしている。「シミュレーションの適用範囲が広がり、あらゆる場面でシミュレーション結果に基づく知見が行き渡ることは市場にとっての大きな変化であり、それをAnsysが進めていく。われわれのアプローチと優れた実行力こそが、Ansysがマーケットリーダーである証しだ」(ゴパール氏)。
もちろん、Ansysだけであらゆる業界の課題やニーズに応えられるわけではない。そのため、Ansysではパートナーエコシステムの構築にも力を入れており、顧客固有の製品開発目標やビジネスの成功を、Microsoft、PTC、Rockwell Automation、Amazon Web Services、Autodesk、NVIDIAといったパートナー企業とともに支援する取り込みも行っている。
講演の後半では、Ansysのシミュレーションソリューションを活用する事例として、Siemens Energy、Bosch、Boston Scientificの取り組みにも触れ、高度なシミュレーションによって確かさを得て、それをビジネスの成功やイノベーション創出へとつなげていることを紹介。ゴパール氏は「Ansysのソリューションによって実現される広範な知見により、未来、つまり持続可能な未来に力を与えることができる。確かさに満ちた未来はそれほど遠い先のことではない」と述べる。
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