キーサイトCEOが来日会見「日本はグローバルのイノベーションのハブとなり得る」:組み込み開発ニュース
キーサイト・テクノロジーはプライベートイベント「Keysight World 2023: Tech Days Tokyo」の開催に合わせて、米国本社 プレジデント兼CEOのサティッシュ・ダナセカラン氏の来日会見を行った。
キーサイト・テクノロジー(Keysight Technologies)は2023年8月28日、同社のプライベートイベント「Keysight World 2023: Tech Days Tokyo」(同月29〜31日、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター)の開催に合わせて、米国本社 プレジデント兼CEOのサティッシュ・ダナセカラン(Satish Dhanasekaran)氏の来日会見を行った。ダナセカラン氏は「First-to-Marketで設計とテストのソリューションを提供し、当社のパーパスで示しているイノベーションの加速に貢献していきたい」と訴えた。
2006年に当時のAgilent Technologiesにエンジニアとして入社したダナセカラン氏は、これまでに複数のリーダー的役割を担うとともに会社の戦略策定に携わってきた。そして、シニアバイスプレジデント兼COOを経て2022年5月にプレジデント兼CEOに就任した。1939年にシリコンバレーで創業したHPの計測器事業部に源流を持つキーサイトは、電子計測器のリーダー企業であるとともに、近年はさまざまな機器の設計や解析に役立つソフトウェアソリューションの展開にも注力しており、COOを経てCEOに就任したダナセカラン氏はこれまでの路線を継承し拡大する役割を期待されている。
キーサイトの2022年度の売上高は54億米ドル(約7950億円)、営業利益率は29%に達する。100カ国以上で事業を展開し、顧客数は3万社以上、グローバルの従業員数は約1万5000人に上る。日本国内では、半導体パラメトリックテストとRF/高周波の開発拠点を有している。ダナセカラン氏は「今回のKeysight Worldを開催する日本は、近代的インフラや技術開発のノウハウと優秀な人材があり、グローバルのイノベーションのハブとなり得る。今後の通信技術開発で重要な役割を果たすミリ波やテラヘルツ波に対応する材料や部品で強みを持つだけでなく、半導体技術の再興や量子技術に注力するなど注目に値する」と強調する。
また、ムーアの法則に沿うだけでなくSiC(シリコンカーバイド)デバイスやシリコンフォトニクスの登場でさらなる広がりを見せる半導体技術の進化をベースに、3GPPが策定する移動体通信技術や有線通信技術の進化を見据えながら「これらの最先端の開発を可能にする設計とテストのソリューションを先行して提供していくことがキーサイトの使命だ」(ダナセカラン氏)と訴えた。
AI(人工知能)による自動化の進展にも注目しており、ChatGPTに代表される生成AIがさらなる進化を遂げ、将来的には人の意志が介在することなくシステム自身が意思決定できる未来がやってくるという見方を示した。現行のAIがANI(Artificial Narrow Intelligence)とすれば、2040年ごろにAGI(Artificial General Intelligence)となり、このAGIから間を置かずASI(Artificial Super Intelligence)が生まれるという。ダナセカラン氏は「ANIやAGIが持つリスクに対して、社会がどう対応するかを決める必要が出てくるだろう」と分析する。ただしキーサイトとしては、エンジニアのワークフローに進化するAIを積極的に取り込んで自動化のメリットを享受できるようにしたい考えだ。
キーサイトは2015年から自動車分野向けの事業展開を強化しており、これまでに100以上のソリューションをそろえ、売上高も年間で5億米ドルを突破する規模まで拡大している。これまではEV(電気自動車)や自動運転システム、車内センサーシステムなどでの展開を進めてきたが、今後はEVとつながる電力網(グリッド)との連携なども視野に入れて事業展開を拡大していく方針である。「自動車の技術進化に貢献することでサステナビリティ(持続可能性)も実現できるだろう」(ダナセカラン氏)。
キーサイト・テクノロジー日本法人 代表取締役社長 電子計測本部長のチエ・ジュン氏は「2023年は、1963年に横河ヒューレット・パッカードとして合弁で日本市場に進出してから60年目の節目に当たる。日本の働きがいのある会社ランキングで17位になるなど、日本での事業活動に高い評価も得られている。また、Keysight Worldは東京から始まったイベントであり、今回は8月29〜31日のエンジニア向けに最新の計測技術を知らせるTech Daysに加えて、9月のLive From the Labや12月のInnovateなども開催する予定だ」と述べている。
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