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品質力は「落ちている」と「変わらない」が拮抗、低下要因は人材不足と技能不足品質不正問題(2/2 ページ)

MONOistでは2023年7月12日に「品質」に関するオンラインセミナー「激変する市場環境 持続可能な攻めの品質管理の在り方とは?」を開催し、114人の来場者にアンケートを回答いただいた。その中で現場での実情が見える内容について抜粋しリアルな課題感などを紹介する。

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39.5%が品質に関する力が「落ちている」と回答、「上がっている」は9.6%

 「品質に関する力について落ちていると感じていますか」という質問については、「落ちている」が39.5%、「変わらない」が35.1%、「上がっている」が9.6%、「分からない」が15.8%と、「落ちている」と「変わらない」が拮抗する結果となった。

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品質に関する力はおちていると感じていますかという質問に対する回答[クリックで資料ダウンロードページへ]

 これらの「品質の力」についてもそれぞれの回答の理由についてフリー回答で答えてもらっている。

品質が「落ちている」とした理由

 品質が「落ちている」とした理由については、最も多かったのが「人材不足」だ。さらに、それに伴う「技能不足」「技能伝承」の問題などを挙げた回答も多かった。主なコメントを以下に紹介する。

  • ノウハウの伝承不足
  • 技術やノウハウの伝承が上手くいっていないと感じる(人材育成)
  • 知識や技術の伝承、過去トラブルの共有が有効に機能させられていない
  • 担当メンバーの入れ替わりによるスキルの低下
  • 現場が正社員やベテラン従業員から、派遣やアルバイトなど、品質管理の基本を知らない人が多くなった。そもそも、品質に関する考え方を間違って認識している人が多い
  • 人のスキルの二極化が進んでいる。考えなくてよい/考えさせないでいいという現場作業者が増加
  • 人材が若返り、品質を維持する力が落ちている
  • 人材不足
  • 製造現場における暗黙知(ノウハウ)の共有がコミュニケーション力低下により弱くなっている
  • 製造作業者の方が、派遣、請負となり過去の知識の継承がされていない
  • 品質関連に限らないが、人不足や経験者の退職などにより、パワーの面でも経験値の面でも低下している

 日本の労働人口そのものが大幅な減少へと向かっていく中、品質に関わるところだけでなくあらゆる現場で人手不足はさらに深刻化していくことは明らかだ。こうした中でノウハウをいかに確保しつつ、品質を保っていく難しさがある。そうした苦しみが既に現場では顕在化しているといえる。

 また、その他の要因としては、業務プロセスの余裕のなさや製品の複雑化などを要因として挙がっている。加えて、外部の要求レベルが上がっているために、相対的に品質を維持する力が落ちているとする声も多かった。

  • サイクルが早く、品質よりリリースを優先する必要性が高まっているため
  • プロセスが分散、重複しているなど複雑化しており、負荷が増えている
  • プロセス分担などが進んだため、前後工程含めたプロセスや性能評価など幅広い知識、知恵を持てなくなっている
  • 過剰要求により相対的に品質が落ちていく
  • 顧客や社会の品質要求が厳しくなっており、従来の考え方から変えていかないと、結果的に力が落ちていることになってしまう
  • 顧客要望は上がっていくが、工法としては変わっていないため。相対的には下がっている
  • 性能コストを追求するため、各パラメータの余裕度が少なくなってきている

 現場に対して、さまざまな要求が高まる一方の中で、人材面やプロセス面、技術面での余裕もなくなり、現場への負担度が高まっている現状が見えてくる。

品質が「上がっている」とした理由

 一方で、品質が「上がっている」とした理由については、品質に関する体制を強化する施策を、着実に打っていることを挙げる声が多かった。

  • 品質保証専門部署を立ち上げたことにより品質管理を正しくできるようになった
  • 製品が高難易度化していく中でも、品質を維持する取り組みのレベルも上がっているので
  • 品質管理のデジタル化が進んできている
  • 品質管理自体は従来とそこまで変わらないが、求められる品質自体は都度更新され続けているから
  • 人の手打ち込みだが、品質情報、生産時の情報はデータ化されており、品質管理に活用を始めているから

 品質が「落ちている」とした理由として挙がった「余裕のなさ」に対し、組織や体制として品質向上に対する施策を打っているところが大きな違いを生み出している。要求レベルが厳しくなる中、現場任せの改善だけではなく、体制として現場をサポートする仕組み作りが重要だといえるだろう。

DXやIoTの推進方法が「困りごと」に

 ただ一方で、こうした「仕組み作り」が、現場の「困りごと」につながっている面も生み出している。「品質についての悩みごとや困りごとはありますか」という質問についてフリー回答で答えていただいたが、その中で多く挙がったのが「品質におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT(モノのインターネット)の推進方法」だった。

  • IoTの乱立による一元化や困難要件定義がうまく伝わらない
  • 収益至上主義のためIoT化は理解されるが、費用対効果で導入を進められない
  • 品質に関するDXに取り組んではいるが、全体像がなく帳票レスなどの個別目的と化している
  • 品質管理をデジタル化するに当たっての1歩目は何をするべきか分からない
  • 品質管理業務のDX推進活動の推進テーマ抽出

 IoTやAI(人工知能)、DXは、別質問で聞いた「品質に関する注目キーワード」でも上位に挙がってきたものだが、実際にはどのように使いこなすべきかというところで多くの現場は苦しんでいる。こうしたデジタル技術に関するノウハウも含めて、体制を用意していくことが重要になってくるだろう。

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