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国内製造業で拡大するサステナブル投資、脱炭素評価で利益生む仕組みづくりも進むかものづくり白書2023を読み解く(2)(5/5 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2023年版ものづくり白書」が2023年6月に公開された。本連載では3回にわたって「2023年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。

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重要性を増すトランジション・ファイナンス

 また、2022年のグリーンローンの組成金額は7656億円で2021年の約5倍、2022年のサステナビリティ・リンク・ローンの組成金額は6573億円で2021年の約2倍であるとされており、いずれも1年間で大幅に増加している(図13)。


図13:国内のグリーンローン、サステナビリティ・リンク・ローンの組成額の推移[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 その中でみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の3メガバンクグループは、2022年度中間決算時点において、サステナブルファイナンスの組成金額を3グループ累計で90兆円となる長期目標を掲げている。現時点で3グループ合計約46兆9000億円と、既に目標の半分以上を達成しているという(図14)。


図14:3メガバンクグループのサステナブルファイナンス目標と実績[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 民間金融機関によるサステナブルファイナンスの推進に向けた動きはメガバンクグループのみにとどまらない。大手地方銀行グループのコンコルディア・フィナンシャルグループは、傘下の横浜銀行と東日本銀行のサステナブルファイナンスの実行累計額(2019年度から2022年9月末)が1兆9196億円であると発表しており、既に2030年度までの目標だった2兆円に迫っている(図15)。


図15:コンコルディア・フィナンシャルグループ サステナビリティ長期KPI[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 このように持続可能な社会の実現を目指すために、サステナブルファイナンスによる資金調達が活発化しているが、特に気候変動への対応については、2050年カーボンニュートラル目標の達成に向けた経済/社会の移行(トランジション)を円滑に進めるために、長期にわたる多大な投資が必要となることから、これを支えるトランジション・ファイナンスの重要性が増している。

 経済産業省は社会と自社のサステナビリティの取り組みを同期させることや、そのために必要な事業変革を「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」と定義した。そして東京証券取引所(以下、東証)と共同で、投資家などとの建設的な対話を通じて、社会のサステナビリティ課題やニーズを自社の成長に取り込み、事業再編/新規事業投資などを通じて、長期的かつ持続的な企業価値の向上に取り組んでいる先進的企業を「SX銘柄」として選定/表彰し、変革が進む日本企業への再評価と市場における新たな期待形成を促す事業を開始する。

 具体的には「SX銘柄」の審査プロセスや審査項目等の作成とSX銘柄の選定を行うための「SX銘柄評価委員会」においてSX銘柄の審査基準などの詳細を策定し、2023年10月から「SX銘柄2024」の公募を開始する。選定結果の公表は2024年春頃に行う予定だ(図16)。


図16:SXの概要[クリックして拡大] 出所:2023年版ものづくり白書

 2050年までにカーボンニュートラルを実現するために、製造事業者はサプライチェーン全体での取り組みを着実に進める必要がある。2023年版ものづくり白書では、取引先を含めた温室効果ガスの排出量の削減や見える化を進めるためには、DXに向けた取り組みが不可欠であり、それによってサプライチェーンの最適化の実現、生産性やエネルギー効率の改善、製品やサービスの付加価値の向上が見込まれるとしている。同時に、新たなビジネスの展開などに戦略的に取り組むことで、産業全体で国際競争力を向上させていくことが重要だとしている。

 これを踏まえて、第3回では、国内製造業におけるDXの状況と、DX人材の育成と確保の現状について紹介する。

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⇒製造マネジメントフォーラム過去連載一覧
⇒特集「カーボンニュートラルへの挑戦」はこちら
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筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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