連載
国内製造業で拡大するサステナブル投資、脱炭素評価で利益生む仕組みづくりも進むか:ものづくり白書2023を読み解く(2)(4/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2023年版ものづくり白書」が2023年6月に公開された。本連載では3回にわたって「2023年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。
日本におけるサステナブルファイナンスの利用は拡大
企業が脱炭素に向けた取り組みを行うに当たっては、設備投資や技術開発に多額の資金が必要となることが課題となっている。このような課題を背景に、企業の脱炭素化を含む新たな産業/社会構造への転換を促す「持続可能な社会を実現するための金融(サステナブルファイナンス)」に対する注目が高まっている。サステナブルファイナンスには下記のようなものがある。
- グリーンボンド:再生可能エネルギーや環境に配慮した製造プロセスなどに関するグリーンプロジェクトに使途を限定した債券
- サステナビリティボンド:グリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトに使途を限定し、かつ、グリーンボンド原則(またはグリーンボンドガイドライン)とソーシャルボンド原則(または金融庁策定のソーシャルボンドガイドライン)のいずれか、または両方の4つの中核要素に適合した債券
- サステナビリティ・リンク・ボンド:事前に設定したサステナビリティ目標の達成状況に応じて財務的/構造的特性が変化する性質を有し、資金使途が限定されていない債券
- グリーンローン:再生可能エネルギーや環境に配慮した製造プロセスなどに関するグリーンプロジェクトに使途を限定したローン
- サステナビリティ・リンク・ローン:事前に設定したサステナビリティ目標の達成状況に応じて、金利などの借入条件が変化し得る性質を有し、資金使途が限定されていないローン
ESG(Environment Social Governance)投資は、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮して投資対象を選別するものだが、世界のESG投資額を集計しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の報告書をみると、世界の運用総額に占めるESG投資額の割合は、2016年から2020年にかけて、27.9%から35.9%に増加している(図11)。
日本におけるサステナブルファイナンスの利用も拡大しており、グリーンボンド、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行実績は発行開始から毎年増加している。サステナビリティボンドのみ2021年から2022年にかけて減少しているが、3種合計の発行額は2021年から2022年にかけても増加しており、サステナブルファイナンスのうち、ボンドの活用が拡大している(図12)。
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