AMRを作り活用するオムロン、綾部工場で進むThe GEMBA活動:スマート工場最前線(2/2 ページ)
オムロンの綾部工場ではさまざまな自動化の取り組みが進んでいる。
AMRで搬送作業を自動化、効率向上に加え作業が平準化
オムロンではAMRを自らの生産工程でも活用しており、綾部工場では現在9台のAMRが稼働、今後さらに2台を追加する予定となっている。AMRが走行する建屋間を結ぶ通路も、窓に結露などが起こる冬場でも路面がぬれないように改装した。
例えば完成品の搬送には6台が活躍。AMRは、MES(生産実行システム)と連動しており、作業者が手元の端末で行った生産終了の情報がエンタープライズマネジャーに送られると、手が空いている一番近くのAMRが自動的に選ばれ製品を回収しに向かう。作業がないAMRはドッキングステーションで充電を行う。
あるフロアでは完成品を出荷エリアに運ぶために3台のAMRが稼働しているが、AMR導入前はそれらを搬送専任の作業者が1人で行っていた。そのため、ある程度の量がたまってたから回収されていたが、AMR導入後は作業終了後にAMRが都度回収に来るため作業量が平準化できた。搬送のリードタイムは80%改善。随時運び出すことで、それまで完成品をためていたスペースもなくなった。
その他、綾部工場では基板の搬送に2台、マスクマガジンの搬送に1台のAMRを活用している。生産工程の途中に導入すれば、仕掛り在庫が減りさらに大きな効果につながる。
光電センサーを組み立てる一部のセルラインコントロールシステムでは、動画データなどを活用して生産数など現場の情報をリアルタイムにデジタルデータ化し予実管理と課題特定に役立てている。
U字型のラインに入った作業者は胸に無線タグを装着。天井に魚眼カメラを付けた画像センサーと無線センサーによって、ラインのどこで誰がどれくらいの時間をかけて作業していたかのデータをERPやMESと連動して収集する。それにより、タクトタイム、サイクルタイム、稼働率を算出する他、不具合が発生した際に、どこで何が起こったのかが映像を通して後日でも検証可能になり、課題特定までの時間を短縮することができる。
ビルディングブロックと呼ばれる自動化設備の構築も進んでいる。専用設備とすると多品種への対応が困難になる。そこで、ビルディングブロックでは協働ロボットと架台、制御部を共通としながら、ねじ締めやはんだ付けなどの各種モジュール、ねじ締めビットやロボットハンド、ワークセット治具などのオプションを組み替えることで異なる製品を組み立てられるようにする。現在はファイバーアンプの組み立てに活用している。
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