アルツハイマー病の早期診断へ、タウPET診断薬の候補化合物を開発:医療技術ニュース
東北大学は、アルツハイマー病発症の原因となるタウタンパクを画像化するPETトレーサーを開発した。他のタウPETトレーサーと比べて信号強度が高く、ごく軽度のステージの病変を明瞭に抽出できる。
東北大学は2023年7月6日、アルツハイマー病発症の原因となるタウタンパクを画像化するPETトレーサーの有力候補となる化合物[18F]SNFT-1を開発したと発表した。東北医科薬科大学との共同研究による成果だ。
アルツハイマー病は、アミロイドβタンパクとタウタンパクが脳内に蓄積し、神経細胞死が続発することを特徴とする認知症の原因疾患だ。同疾患の治療薬開発には、アミロイドやタウのPET(ポジトロン断層法)検査が不可欠であり、特にタウPET検査で用いる、より高性能なPETトレーサーが求められていた。
研究グループは、過去のPETトレーサー開発の経験に基づき、元になる化合物(THK5351)の化学構造を繰り返し改変することで、新たな低分子化合物[18F]SNFT-1を開発した。
タウPET検査では、トレーサーがタウタンパク以外に誤って結合する「オフターゲット結合」が知られている。しかし、[18F]SNFT-1はタウタンパク凝集物にのみ結合し、オフターゲット結合の標的物質であるモノアミン酸化酵素Bやアミロイドβ線維などには結合しない。
そこで、認知症の症状が出ていない初期アルツハイマー病の病理所見を示した脳標本を用いて評価したところ、タウ病理の重症度がごく軽度であるブラークステージIIでも[18F]SNFT-1はタウに結合し、明瞭に病変を抽出した。
また、他のタウPETトレーサーとの比較では、[18F]SNFT-1はタウ結合部で最も高い信号強度を示した。このことから、より優れた検出感度を持つ可能性があることが分かった。
マウスを用いた実験で、脳内への取り込みの高さや、ウォッシュアウトが速やかであることから、PETトレーサーに求められる薬物動態性能を満たしていることも確認された。
今回の研究成果は、アルツハイマー病患者を早期発見するためのPET診断薬として、臨床での応用が期待される。
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