革新軽水炉「iBR」の開発に注力する東芝、CPSで原発再稼働も支援:デザインの力(3/3 ページ)
東芝は、原子力事業で取り組みを進めている国内原子力発電所の再稼働に向けた支援の体制やデジタル技術を活用したプラント運営支援サービス、次世代革新軽水炉「iBR」の開発状況について説明した。
緊急避難不要を目指す革新軽水炉「iBR」
今後の原子炉の新設に対応するため、東芝ではさまざまな革新炉の開発に取り組んでいる。2040年代以降の実用化が想定される高温ガス炉や、2050年代以降となる小型高速炉、マイクロリアクターなども手掛けているが、現在注力しているのは2030年代の実用化が見込まれる革新軽水炉のiBRである。
福島第一原子力発電所事故では、全交流電源喪失によるシビアアクシデントの結果として大量の放射性物質が放出され、地域住民が長期避難を余儀なくされた。坂下氏は「この教訓に基づき構想されているiBRは、航空機衝突やテロなどの外部ハザードに対する耐性強化、確率論的評価に基づく安全対策、炉心溶融を前提とするシビアアクシデント対策、放射性物質の放出を伴うベントを行わないことで緊急避難を不要とすることなどを目指している」と説明する。
そのためにiBRで採用するのが、航空機衝突対策格納容器建屋、二重円筒格納容器、ウルトラコンデンサー/静的格納容器冷却系、格納容器内蔵型静的放射能フィルター系、革新的コアキャッチャーである。
特殊なSC(鋼板コンクリート)構造を用いた堅牢な航空機衝突対策格納容器建屋は、格納容器とともに静的安全システムを全て内包している。低重心建屋とすることで、安全性、耐震性、経済性のいずれも向上させる設計となっている。
ウルトラコンデンサー/静的格納容器冷却系は、水プールによって炉心と格納容器を自然冷却し、運転員の操作なく7日間炉心溶融を防ぐ。そして、革新的コアキャッチャーは炉心溶融が発生した際にも弁操作なしに静的メカニズムで溶けたデブリなどの自然冷却が行える。格納容器内蔵型静的放射能フィルター系は、シビアアクシデント時に発生する水素や放射性物質を二重円筒格納容器外側の大容量空間に閉じ込めることでベントが不要になるとしている。
なお、iBRは、実績を積み重ねてきた東芝の改良型BWR(ABWR)に、長年研究開発してきた静的安全技術を加えたコンセプトとなっている。特にABWRは、再循環流量制御により原子炉出力を容易に調整可能であり、自然環境によって発電量が大きく変動する再生可能エネルギーに対する負荷追従性も有しており「iBRでもこの強みを生かせるだろう」(坂下氏)としている。
なお、東芝エネルギーシステムでは、多様な部門の幅広い年齢層の社員が参加してiBRのデザインを検討するワークショップを行って将来の原子力のあるべき姿を討議し、その結果として「原子力発電所デザインVision」を策定した。その上で導き出したのが、記事冒頭に掲載したiBRのコンセプトイメージである。
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