JSRが仕掛ける国内半導体材料業界再編、官民ファンドが株式非公開化で後押し:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
JSRは、官民ファンドである産業革新投資機構傘下のJICCが実施する約9000億円規模の株式公開買い付けによって非公開化する方針について説明。「半導体材料の事業再編に向けた大きな推進力を得られる」(JSR 代表取締役 CEO 兼 社長のエリック・ジョンソン氏)という。
2023年12月下旬に公開買い付けを開始予定
今回の株式公開買い付けは、JICの100%子会社であるJICCが2023年6月15日に設立した「JICC-02株式会社」が実施する形式を取る。現時点でJICCが保有するJICC-02の株式は、公開買い付けの決済までの期間にJICCが運用する2つのファンド(JICCファンド)に譲渡する予定。JICC-02による公開買い付けの実行に必要な資金は、みずほ銀行と日本政策投資銀行(DBJ)がJICCファンドを割り当て先とする優先株式の第三者割当増資で賄う。
株式公開買い付けの価格は1株当たり4350円で、発表前の平均株価に対して約41%のプレミアムが加わっている。JSRの非公開化に向けた買い付け予定数は最大数となる2億779万7073株としており、この場合の買収金額は9039億1726万7550円となる。買い付け予定数の下限は、所有割合で66.67%以上となる1億3853万1400株としており、応募総数がこれに満たない場合には買い付けを実施しない方針。下限を上回るものの全株式を取得できない場合には、2段階買収によるスクイーズアウト(少数株主の排除)を実施して全株式を買収できるようにする。なお、JICC-02による公開買い付けの開始時期は、国内外の規制当局への手続きを経て2023年12月下旬をめどとしており、公開買い付け期間は20営業日を予定している。
JSRは、2023年6月26日に開催した取締役会において、JICC-02による公開買い付けに賛同するとともに、株主に対して応募を推奨することを決議している。なお、今回の非公開化については、2022年11月にJSRがJICCに打診したところから協議が始まり、4人の社外取締役から成る特別委員会が株式公開買い付けの価格の引き上げなどを行った上で取締役会に答申し、承認された。
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