エッジ運用の“非効率”を解決する、デル・テクノロジーズの「NativeEdge」:エッジコンピューティング
デル・テクノロジーズが年次カンファレンス「Dell Technologies World 2023」で発表した同社の最新ソリューションについて説明。エッジ分野では、2022年から開発を進めてきたエッジ運用ソフトウェアプラットフォーム「NativeEdge」が正式発表されている。
デル・テクノロジーズは2023年6月23日、東京都内で会見を開き、同年5月22〜25日に米国ラスベガスで開催した年次カンファレンス「Dell Technologies World 2023」で発表した同社の最新ソリューションについて説明した。同カンファレンスにおける5つの注力テーマの内、製造業との関わりが深いエッジ分野では、2022年から「Project Frontier」として開発を進めてきたエッジ運用ソフトウェアプラットフォーム「Dell NativeEdge(以下、NativeEdge)」が正式発表されている。
年次カンファレンスの「Dell Technologies World」は、デルとEMCの統合に併せて始まっており今回で8回目となる。デル・テクノロジーズ 上席執行役員 システムズエンジニアリング統括本部長の藤森綾子氏は「コロナ禍が明けて参加者も大きく伸び、全体で登録者は約1万人に達した。日本からも150人以上の方に参加していただけた」と述べ、リアルイベントとして以前の活気が戻っていることを強調した。
同社が基調講演などを通して、注力する5つの柱として紹介したのが将来の「仕事環境の変化(Future of Work)」「マルチクラウド「AI(人工知能)」「セキュリティ」、そして「エッジ」である。マルチクラウドについては「APEX」ブランドの下でas a service型のポートフォリオを拡張しており、AIもNVIDIAと共同で開発を進めるフルスタックの生成AIソリューションとして「Project Helix」を2023年後半に投入する予定だ。セキュリティも、30社以上のパートナーが参加しエンドツーエンドのゼロトラストソリューション「Project Fort Zero」の開発が進んでいる。
日本ではエッジの運用に非効率を感じていない?
エッジについては、NativeEdgeが2023年8月から世界50カ国の顧客、OEM、パートナー向けに提供開始されることがアナウンスされた。エッジのオペレーションを安全に拡張し、製造業などの現場を含めたあらゆるユースケースをサポートするソフトウェアプラットフォームとなっている。
NativeEdgeを投入する狙いは、拡大が続くエッジコンピューティング市場におけるエッジ運用の非効率を解決することにある。デル・テクノロジーズ システムズエンジニアリング統括本部 通信統括部 部長の雨堤政昭氏は「エッジを起点に破壊的イノベーションが生まれているものの、エッジの非効率は依然として残っている。グローバルの調査では、61%がエッジにこそ機会(オポチュニティ)があると考える一方で、76%がエッジの運用が非効率だと感じている」と語る。
実はこの調査結果を日本市場に限定すると、エッジに機会があると考える比率は65%とグローバルとほぼ同じであるのに対し、エッジの運用が非効率だと感じているのは49%とかなり少ない結果になっている。「これは、日本では各現場がそれぞれエッジを運用している状況にあり、エッジにトータルな運用管理する仕組みを導入していないからではないか。今後エッジコンピューティングの活用が進む中で、グローバルと同様にエッジ運用の非効率が課題になってくるのではないか」(雨堤氏)という。
NativeEdgeは、現地でのITサポートが少なくてもセキュアなエッジの導入を容易に行える「ゼロIT」「ゼロトラスト」を掲げており、今後導入するデバイス数の増加に対応するスケーラビリティも確保している。さらに、先述した5つの柱の1つであるマルチクラウドの一部としてエッジを運用していくためのプラットフォームにもなる。雨堤氏は「エッジの非効率はデバイスの数だけ増えていく。そのことを前提にしたプラットフォームになっている」と説明する。
NativeEdgeの提供方法としては、「PowerEdge XR4000シリーズ」などのサーバ、「OptiPlex」などのデスクトップPC、工場などで用いられるIoT(モノのインターネット)ゲートウェイ製品といったNativeEdge対応デバイスにプリインストールする形を想定している。工場における製造の段階からNativeEdgeを組み込むことで、顧客の手元まで納入するサプライチェーンの中で万が一改ざんなどが起きても、製造と同時に顧客に発行されるバウチャーに基づいて確認することが可能になる。
こういったセキュアなサプライチェーンの確保だけでなく、各エッジデバイスに導入するコンテナや旧来のアプリケーションソフトウェアなどをブループリントとして配布できる「NativeEdge Orchestrator」により、エッジにおけるアプリケーション運用を一元管理できる仕組みも用意している。「今後は、データセンターやクラウドと連携する形でエッジ運用を高度化するソリューションも投入予定であり、NativeEdgeによってエッジの非効率の解決をさらに進められるようになる」(雨堤氏)としている。
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