新型アルファード/ヴェルファイアの意匠を実現した「体脂肪率ゼロ」:車両デザイン(2/2 ページ)
トヨタ自動車はフルモデルチェンジした「アルファード」「ヴェルファイア」を発売した。2015年以来8年ぶりの全面改良となる。
ミニバンの側面が平板になってしまうのは、スライドドアの機構が要因の1つだ。ドアを開けるときにはドアをリフトした後で横に移動するが、抑揚をつけて側面の凹凸が大きくなるとリフトする量が増える。これにより、スライドドアのレールが室内側に張り出す部分も大きくなり、2列目シートの乗員の肩から内装までの空間に影響が出てしまう。
今回のフルモデルチェンジでは全幅を1850mmに抑える必要があり、全幅を広げることで抑揚を大きくつけることは難しかった。また、快適な移動空間であることを重視する以上は、室内を犠牲にしてデザインを優先することもできない。へこんだ部分をつくることで他が膨らんでいるように見せるため、ドア内部のインパクトビームなどの配置や後部座席向けのエアコンユニットのレイアウトなどを少しずつ調整して、ミリメートル単位でスペースを削った。これを体脂肪に見立て、「体脂肪率ゼロパッケージ」をキーワードに掲げて検討を進めたという。
振動は従来の3分の1に
動くオフィスやプライベート空間として利用できるよう後部座席の快適性を高めるため、基本骨格を見直すとともに振動やノイズの低減を徹底した。車台はTNGAプラットフォーム「GA-K」をミニバン用に最適化。ロッカーをストレート構造とし、車体底部の後方にはブレースをV字型に設けることで車両剛性を従来モデルから50%向上させた。
構造用接着剤の使用量は5倍に増やした。乗員の足元には高減衰タイプを、車両後方のねじれが発生しやすい箇所には高剛性タイプの構造用接着剤を塗布している。通常のタクトタイムで塗布量を増やせるよう工夫したという。
サスペンションは、フロントをTNGA用のマクファーソンストラット式に刷新し、リアは従来のダブルウィッシュボーン式をベースに新開発した。地面から伝わる振動の周波数に応じて減衰力を機械的に可変させる周波数感応型ショックアブソーバーを設定し、操縦安定性と振動吸収を両立している。2列目のシートにはクッションフレームの取り付け部分にゴム製のブッシュを配置した他、背もたれやアームレストに低反発フォームパッドを採用した。さまざまな防振の工夫により、乗員に伝わる振動を従来モデルの3分の1まで抑制した。
ロードノイズや風切り音の対策としては、新開発の低騒音タイヤ、カウルへの吸音材の配置、エンジンフードの先端やドアミラー、フロントピラーなど風圧を強く受ける部位の形状の最適化などを実施した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 全固体はHEVではなくEVで、トヨタが技術開発の進捗を発表
トヨタ自動車が電動化や知能化に向けた技術開発の取り組みを発表した。 - 上海モーターショー開幕、日系各社が2024年発売のEVを世界初公開
第20回上海国際自動車工業展覧会が開幕した。日系自動車メーカー各社がEVのプロトタイプや市販予定車などを披露している。 - EVの走行距離倍増、PHEVはモーター走行200km……トヨタ新体制が方針
トヨタ自動車は新体制での経営方針を発表した。社長に就任した佐藤恒治氏、副社長の中嶋裕樹氏と宮崎洋一氏が出席し、電動化の計画や「モビリティカンパニー」を目指す変革などについて説明した。 - トヨタも採用する「バイポーラ型電池」、出力を向上できる仕組みとは
今回は、「バイポーラ型電池」とは何か、これまでの電池と何が違うのかといった点を解説していきたいと思います。 - 5代目プリウスで取り組んだ、「従来の延長線上ではない全面改良」
新型プリウスはいかにして生まれ、どのように仕上げられたのか。「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」の新車開発講演ではその一端が語られた。 - 脱炭素と循環型社会の実現へ、トヨタが積み重ねる多種多様な取り組み
「カーボンニュートラルの取組みと循環型社会へのチャレンジ」と題した「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」での講演の中で、トヨタ自動車が温暖化対策、循環型社会の構築に向けた活動を紹介するとともに、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの関係性を語った。