5代目プリウスで取り組んだ、「従来の延長線上ではない全面改良」:電動化(1/3 ページ)
新型プリウスはいかにして生まれ、どのように仕上げられたのか。「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」の新車開発講演ではその一端が語られた。
エコカーの代名詞であるトヨタ自動車のハイブリッド車(HEV)「プリウス」。1997年の初代誕生以来、これまで一貫して“みんなの手に届くエコカー”として存在し続けてきた。
トヨタには「エコカーは普及してこそ環境への貢献」という考えがあり、5代目となった新型プリウスでもそれが引き継がれている。一方で、5代目に進化させるに当たり、「これまでの延長線上のモデルチェンジはいけないという危機感を持った」と、トヨタ自動車 TC製品企画 主査の大矢賢樹氏は振り返る。
新型プリウスはいかにして生まれ、どのように仕上げられたのか。「人とくるまのテクノロジー展 2023 横浜」(2023年5月24〜26日、パシフィコ横浜)の新車開発講演ではその一端が語られた。
歴代プリウスの歩み
5代目プリウスの企画趣旨を理解するため、まずは歴代モデルをおさらいする。初代が誕生したのは1997年で、「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーとともに世界初の量産HEVとして産声を上げた。プリウスはラテン語で「先駆け」を意味する。燃費性能は10・15モードで28.0km/l(リットル)を達成。当時、同排気量の「カローラ」が約19km/lだったことを考えると、プリウスがいかに圧倒的な燃費性能を実現していたかが分かる。
2代目は2003年に登場した。HEVの普及を目指し、環境性能の向上に加えて走行性能にもこだわった新たなハイブリッドシステム「THSII」を採用。燃費は10・15モードで35.5km/lを達成し、初代から大幅な燃費改善を果たした。先進性にもこだわり、「今ではどのクルマでも搭載されているシフトバイワイヤやプッシュスタートボタンを先駆けて採用した」(主査の大矢氏)のが特徴だった。
3代目は2009年に発売。エンジンの排気量を1.5lから1.8lに拡大し、動力性能を引き上げた。燃費性能もさらに磨き、10・15モードで38.0km/l、JC08モードでは32.6km/lを実現した。「ハイブリッドを特別から当たり前のものにする」(大矢氏)という目的で、3代目からはトヨタとして初めて全チャネルでの販売とした。
2015年に登場した4代目は、クルマづくりの設計思想「TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャ)」を初めて採用したモデルとなった。燃費はJC08モードで40.8km/lを達成。さらなる燃費向上を実現するだけでなく、TNGAにより「走りの質感も高めた」(大矢氏)のが特徴となっている。また、積雪地域から要望が多かった4WDモデルを設定。より多くのユーザーに使ってもらうために、ラインアップを充実させたモデルでもあった。
2022年時点で、プリウスを含むトヨタのグローバルでのHEV販売台数は2000万台を超えている。このうち歴代プリウスが577万台を占めているという。トヨタはこの販売台数によって1億6200万トンの二酸化炭素(CO2)排出量が削減できたとしており、その上で大矢氏は「HEVの普及に向け取り組んできた結果、その普及という役割は完遂した」と述べた。
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