新型プリウスは「愛車としてカーボンニュートラルに貢献」、スポーティーさ前面に:電動化
トヨタ自動車は2022年11月16日、フルモデルチェンジした「プリウス」を世界初公開した。日本の他、北米や欧州などグローバルで順次展開する。ハイブリッド車(HEV)は2022年冬、プラグインハイブリッド車(PHEV)は2023年春に発売する予定だ。
トヨタ自動車は2022年11月16日、フルモデルチェンジした「プリウス」を世界初公開した。日本の他、北米や欧州などグローバルで順次展開する。ハイブリッド車(HEV)は2022年冬、プラグインハイブリッド車(PHEV)は2023年春に発売する予定だ。
新型プリウスは、エンジンの排気量違い(2.0l(リットル)と1.8l)でハイブリッドシステムを2種類設定した。排気量2.0lのエンジンと組み合わせるプラグインハイブリッドシステムはトヨタ初採用となる。
ハイブリッドシステムは従来型と同等の燃費を達成するとともに、加速感やレスポンスの良い走りを実現した。従来モデルのWLTCモード燃費は27.2〜32.1km/lだ。システム最高出力は、排気量2.0lのタイプで従来モデル比1.6倍となる144kWとなり、スポーティーな動力性能を確保する。最新版の電気式4WDシステム「E-Four」では、高出力モーターの採用などにより、雪道での登坂性能や、旋回時の安定性を向上させている。
プラグインハイブリッドシステムは、高出力の駆動用バッテリー採用により、従来モデルと同等の燃費を維持しながらシステム最高出力は164kWを確保する。従来モデルのWLTCモード燃費は30.3km/lだ。時速0〜100kmの加速は6.7秒で、ハイブリッドシステムと同様にスポーティーな動力性能を実現する。エンジンを駆動せずモーターのみで走行するEV走行距離は、従来型に比べ50%以上向上した(従来モデルのEV走行距離はWLTCモードで60km)。日常生活の大部分をEV走行でカバーできるようバッテリー性能を向上させたという。これまで荷室下にあった電池パックをリアシート下部に移動したことで、低重心化とラゲージスペースの拡大を図った。
この他、プラグインハイブリッドシステムでは充電中に外部電源の電力を利用してエアコンやオーディオを使用できる「マイルームモード」を設定した。ソーラー充電システムも用意した。1年間で走行距離1250km分に相当する発電が可能だ。駐車中は駆動用バッテリーに充電し、走行中は補機バッテリーの電力消費を補う。
アクセサリーコンセント(AC100V、1500W)をセンターコンソール後端とラゲージルームの2か所に設置した。エンジンを始動せずにバッテリーだけで給電する「EV給電モード」、バッテリー残量が低下するとエンジンで発電する「HV給電モード」が選択できる。従来モデルでは車内で接続したアクセサリーコンセントを窓から外に出す必要があったが、ドアガラスを閉じたまま外部給電できるアタッチメントを標準で用意している。
新型プリウス向けに第2世代のTNGAプラットフォームを開発し、低重心化と大径タイヤの採用を実現した。ボディーの各所に補強を施し、高剛性化と静粛性向上を図った。改良を加えたサスペンションが、直進での安定感とコーナーでの車両応答性やライントレースのしやすさに貢献するとしている。
車両サイズは、従来モデルと比較して全長が25mm増の4600mm、全高が40mm減の1430mm、全幅が20mm増の1780mmとなる。全高を大きく下げた分、ヒップポイントも下げている。ホイールベースは50mm増の2750mmだ。タイヤは19インチの大径細幅タイヤを採用する。
運転支援システム「Toyota Safety Sense」のフロント用単眼カメラと、電子インナーミラー用の後方カメラを活用した車載型ドライブレコーダーも設定した。データをECU(電子制御ユニット)に保存することで、SDカードに起きやすいデータ破損などのトラブルを回避する。
コモディティではなく愛車としてのプリウス
発表に合わせて、トヨタ自動車 クルマ開発センター デザイン領域 統括部長のSimon Humphries(サイモン・ハンフリーズ)氏が新型プリウス開発の思いを語った。
一見するとHEV重視のトヨタ自動車に対して「いつまでHEVを作り続けるのか」という声が大きくなっていると受け止めた上で「プリウスはどうしても残さなければいけないと社長(豊田章男氏)から聞かされた。みんなの手が届くエコカーが、カーボンニュートラルに向けて世界中が協力する上で必要だからだ。カーボンニュートラルを今日から始める上でも重要な役割を果たす」(ハンフリーズ氏)と、HEVの重要性を述べた。
プリウスのフルモデルチェンジに当たって、豊田氏から「真のコモディティを追求するべきではないか。タクシーのように、走行距離の長いクルマで台数を増やしてこそ環境に貢献する」とタクシー専用車にする提案があったという。これに対し、開発陣は「合理的なベネフィットだけでなくエモーショナルな体験によって選ばれるプリウスでありたい」とし、合理性や燃費性能だけでなく、デザインや走行性能など数字に表れない訴求力も高めた。
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