SaaS型PLMを推進、自動運転向けや産業機械業界、防衛業界などでシェア拡大:製造ITニュース(2/2 ページ)
アラスジャパンは記者会見を行い、モノづくり情報に対する基盤としての強化を進めていくとともに、AnsysやAVEVA、Microsoftなどのプラットフォームパートナーの協業強化により成長を進めていく方針を示した。
自動運転向けや産業機械業界、防衛業界などでシェアを拡大
これらの機能強化を生かしつつ、国内ではまず既存のPLMシステムを導入している企業に対し、それらでカバーできていない領域でのアドオンでの導入を進めるとともに、従来導入が進んでいなかった領域に対し、初期投資の少なさや柔軟性などを強みとして普及を進めている状況だ。
アラスジャパン 社長 兼 Aras 日本リージョンオペレーション担当副社長の久次昌彦氏は「自動車業界では以前からPLMシステムは使われていたが、システムが複雑化する自動運転の領域では従来のシステムにはない柔軟性などが求められ、そこで評価を受けて導入が進んでいるのが特徴だ。また、重工業業界や防衛業界、産業機械業界は従来はPLMシステムを使っていなかった領域だが、製品の複雑化が進む中でPLM導入が進み始め、その中でArasを導入いただくケースが増えている」とここまでの手応えについて語っている。
Microsoft、Ansys、AVEVAとの協業を展開
今後、さらに成長を進めるために重視しているのがプラットフォームパートナー戦略である。従来の販売パートナーとは異なり、それぞれの製品開発などにも踏み込みながら協業を進めているのが特徴だ。久次氏は「既に協業を発表しているMicrosoft、Ansys、AVEVAとのパートナーシップがカギを握る」と語る。
Microsoftとの協業については、Microsoftのクラウドサービスである「Microsoft Azure」の仕組みの中に、「Aras Innovator」をコンテナ化して提供し、Azure上で提供するSaaS型アプリケーションとして、マーケットプレースで提供できるようにした。既に企業としてはAzureを導入している企業に対しては「Microsoft Azure Consumption Commitment(MACC)」により、Azure利用部分を二重で支払う必要がないように割引して提供できるようにしている。同サービスを2社共同で販売し、普及を進めていくという枠組みだ。
シミュレーションベンダーのAnsysとの協業については、Ansysが提供するSPDM(シミュレーションプロセス&データマネジメント)システムである「Ansys MINERVA」のシステム基盤としてまず「Aras Innovator」を提供している。さらに、Arasが提案する「Aras Innovator」によるデジタルスレッドの一部としてSPDMシステムを位置付け、相互の連携や協働での提案などを進めていく。
プロセス製造業向けの設計や管理などに強みを持つAVEVAとの協業は、AVEVAが展開するALM(アセットライフサイクルマネジメント)システムの基盤として「Aras Innovator」を採用し、AVEVAブランドでの展開を進める。さらに、モジュラー設計を推進するEPC(設計、調達、建設)企業などに向けて、「Aras Innovator」の提案なども共同で進める。
今後はこれらのプラットフォームパートナーをさらに拡大し、共同展開やOEM提供などでさらなる成長を推進する方針だ。マーチン氏は「パートナーシップで重視しているのはフィロソフィーが同じである点や文化が同じである点だ。その前提を踏まえた上で協業することでパートナーのソリューションが強化できるか、Arasも成長できるかという両面で考えてメリットがある場合は進めている。既にこれらの3社以外にもパートナーシップを進める計画は進んでいる」と述べている。
これらのパートナー先と競合する企業と新たにパートナーシップを結ぶ可能性については「基本的には既に協業を進めているパートナーが不利になるようなことはしたくない。既存のパートナーと信頼と責任感を持って付き合う」(マーチン氏)としている。
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