DX時代の「グローバルPLM」(1):PLMとは何が違うのか?:DX時代のPLM/BOM導入(8)(1/2 ページ)
本連載では製造業DXの成否において重要な鍵を握るPLM/BOMを中心に、DXと従来型IT導入における違いや、DX時代のPLM/BOM導入はいかにあるべきかを考察していく。第8回は、新しく登場した「音更さん」と「鹿追さん」がグローバルPLMの概念を取り上げ、理解を深めていく。
前回までは筆者が解説する形式でDX時代のPLMやBOM(部品表)の潮流を紹介してきました。今回からは、「音更さん」と「鹿追さん」の2人に登場してもらい、DX時代のPLM/BOMへの理解をより深めていきたいと思います。
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本連載の登場人物
音更しほ(おとふけ しほ):大学の工学部を卒業後、とあるグローバル製造業の経営企画部門に配属された入社3年目の社員。会社の戦略で、グローバル製品開発を可能にする情報基盤の企画を担当することに。PLMやBOMについて勉強中。
鹿追然(しかおい ぜん):製造業特有の業界事情に詳しく、製品開発やPLM、サプライチェーンマネジメント(SCM)の業務改革経験も豊富。経営コンサルティング会社「鹿追コンサルタント」を率いる。
(※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
あらすじ
音更さんの会社では、グローバル製品開発を進めるための情報基盤の企画プロジェクトを進めることになりました。音更さんはこれまで、製品開発プロセスのレビュープロセスに関する実務部門のサポートを主に担当していました。そのため、今回のプロジェクトを進めるに当たり、知識面では不安なところもあるようです。ただ、もともとグローバルな仕事を希望していたこともあり、今回のプロジェクト自体にはワクワクしているように見えます。
とはいえ、どうプロジェクトを進めればよいか悩んでいた音更さん。そんな時、PLMやBOMを用いて数々の企業の改革を導いてきた実績がある「鹿追コンサルタント」の話を耳にしました。音更さんが同社に相談したところ、プロジェクトを進める上での重要ポイントをレクチャーしてもらえることになったようです。以下では、ここからの会話を見ていきましょう。
グローバルPLMとは?
はじめまして! 今回当社で製品開発をするためのグローバル情報基盤の企画を担当することになりました。ただ、壮大なテーマで何から手を付ければ良いか分からなくて……。初歩的な内容からご指導をお願いします。
分かりました。ちなみに、グローバル開発に関連するコンセプトで「グローバルPLM」という言葉がありますが、聞いたことはありますか?
本で少し読んだことはあります。でも正直、まだピンときていなくて……。どういう意味なのか、教えてもらえませんか?
図表1の右図はグローバルPLMを導入した後の仕組みを示しています。中央にあるのがグローバルPLMのデータベースです。そこに複数の事業部(製品開発部門)がBOMや図面などの技術情報をインプットしていき、国内だけでなく海外の工場でも情報を取り出して、生産に利用できるというシステムです。
うーん、まだしっくりきていません……。従来のPLMと比べると、どういう点で違いがあるのでしょうか?
複数の事業部や工場が、1つの統合化されたデータベースを活用する点です。図表1の左図を見てください。これはグローバルPLMの導入前の姿ですが、事業部と工場がひも付けられていて、それぞれの間で個別に情報共有がなされています。一方で、導入後である右図では、シングルデータベースを介して事業部と工場がつながっていることが分かりますね。
なるほど! 情報が一箇所にまとまっていて、製品生産や開発をグローバルに進める上では理想的なシステムに見えます。実際、導入することでどんな効果が生まれるのですか?
まず、グループ全体の開発、生産プロセスの効率化に加えて、組織統合や再編が容易になります。
簡単な例を挙げてみましょう。従来、あるメーカーのA事業部とF工場はローカルルールに基づき、互いに仕事をしていました。共通認識があるので、F工場はA事業部の仕事をすんなりと受けられます。
ある時、A事業部からの仕事が少なくなったので、F工場は別のB事業部からも仕事を受けようとします。ここで問題が生じました。図面やBOM、設計変更のルールがA事業部と違うので、生産管理システムにその情報を取り込めなかったのです。
一方で、グローバルPLMを導入すれば、これらのルールがグループ全体で統一されるので、別事業部の製品生産の準備も容易に進められるようになります。
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