アラスがクラウドPLMのSaaS提供で攻勢、組立製造に加え建設/化学も取り込み:製造ITニュース
アラスジャパンは、東京都内で開催したグローバルコミュニティーイベント「ACE 2022 Japan」に合わせて記者会見を行い、同社事業の進捗状況を説明。コロナ禍前から開発を続けてきたクラウドベースのPLMへの移行によって多くの顧客から高い評価を得ており、組立製造業以外の分野への展開拡大も始まっているという。
アラスジャパンは2022年6月10日、東京都内で開催したグローバルコミュニティーイベント「ACE 2022 Japan」(同月9〜10日)に合わせて記者会見を行い、同社事業の進捗状況を説明した。コロナ禍前から開発を続けてきたクラウドベースのPLMへの移行によって多くの顧客から高い評価を得ており、組立製造業以外の分野への展開拡大も始まっているという。
これまでアラス(Aras)は、オープンソースのソフトウェア開発をベースに、PLMシステム「Aras Innovator」の展開を拡大してきた。これまでに、Aras Innovatorを導入したサーバの数は13万2000、グローバルのアクティブユーザー数は400万、アラスのコミュニティーが開発したアプリケーション数は1000に達する。アラス CRO(Chief Revenue Officer)のトム・ロブレスキー(Tom Wroblewski)氏は「世界で最も多くのユーザーに使われているエンタープライズ向けのPLMシステムだ」と語る。また、売上高の過去7年間の年平均成長率は37%、サブスクリプション継続率も95%など、業績面でも良好な数字を積み重ねてきた。
直近の1年間では、Aras Innovatorの“フルクラウド化”と呼べるような、クラウドPLMとしての機能強化が顧客から高い評価を得ている。従来のAras Innovatorは、オンプレミスもしくはIaaSクラウド上での運用が前提になっていたが、2021年2月にAras Innovatorをコンテナ化してクラウド上で運用できるようにする「AICD(Aras Innovator Container Deployment)」を投入。さらに同年4月には、新たなサブスクリプション契約でSaaS形式のPLMシステムを利用できる「Aras Enterprise SaaS」の提供も始めた。
アラスジャパン 社長の久次昌彦氏は「コロナ禍でリモートワークが広がり、PLMシステムへのアクセスや運用管理についてもリモートのニーズが急激に高まってきた。製造業などでは設計開発に関わるデータをクラウドに置きたくないという拒否感が強かったが、コロナ禍を経て大きく和らぎ、クラウドPLM導入のハードルが下がった。この流れと、それまでに開発を進めていたAras Innovatorのコンテナ化、SaaS提供のタイミングが同期した形だ」と説明する。
2020年から約2年間のアラスの製品アップデートと事業展開のタイムライン。2021年2月の「AICD」、同年4月の「Aras Enterprise SaaS」が高い評価を得ている[クリックで拡大] 出所:アラスジャパン
また、コンテナ化によって、設計開発のCI/CD(継続的インティグレーション/継続的デリバリー)サイクルに組み込まれるようになったこと、PLMシステムの運用におけるフルマネージドサービスをアラスから提供できるようになったことなど、さまざまなメリットが得られたという。
顧客についても、従来の自動車、航空機、ハイテクなどの組立製造業に加えて、CPG(消費財)、建設/建築、化学/エネルギーなどの産業分野での採用が広がっている。「組立製造業のようなBOMを持たない半導体産業でもアラスは広く採用されているが、そういった従来とは異なるデータ管理ソリューションが求められる分野で強みを生かす」(久次氏)。
今後のAras Innovatorの開発方針として、アラス CTOのロブ・マカベニー(Rob McAveney)氏は「継続的な新機能の提供」「製品開発の複雑性に関わるバリエーション管理の対応」「大規模3Dビューイング機能の納入」「ローコード開発機能の生産性向上」の4つを挙げた。「クラウド版のAras Innovatorはオンプレミス版の機能を全て使えるだけでなく、ローコード開発機能により無限ともいえるカスタマイズが可能だ。今後は、クラウドにリアルデータも取り込むことで予知保全なども実現できるようになるだろう」(同氏)としている。
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