日立が取り組む香りのデジタル化、ソフトウェア活用で複数の成分を同時計測:FOOMA JAPAN 2023
日立グローバルライフソリューションズは「FOOMA JAPAN 2023」において、日立製作所と共同で数年前から開発中の香りセンシングソリューションを参考出展した。2024年度以降の事業化を目指している。
日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立GLS)は「FOOMA JAPAN 2023」(2023年6月6〜9日、東京ビッグサイト)において、日立製作所と共同で数年前から開発中の香りセンシングソリューションを参考出展した。2024年度以降の事業化を目指している。
今回は日立GLSは光音響技術を採用したソリューションを開発している。装置内に吸引した空気に含まれている香りの分子にLEDで特殊な光を照射し、原子間の結合部分を振動させ、生じた音波を内蔵マイクで捉えてデジタル化する。分子ごとに周波数と強度が異なるという特徴があるため、香りの成分や濃度を判別できるという仕組みだ。能力は人とほぼ同等という。
従来使われていた半導体式センサーでは、香りの成分ごとに測定可能なセンサーが決まっており、さまざまな香りを測りたい場合は成分ごとに専用のセンサーが必要になっていた。
今回の光音響式なら、照射する光の特性をソフトウェアで変更し、計算処理することで複数の香りの成分を1つのセンサーで計測できるようになる。さまざまな香りが混在する現場にも導入しやすい他、濃度の検出も可能なため含有成分量の把握や基準値との比較ができる。内部はLEDとマイクという部品構成になっており、メンテナンスも容易だ。
醸造工程の省力化などをユースケースとして想定している。醸造工程で生まれる香りの経時変化を捉えることで、成分や濃度変化を可視化して仕上がりの予測ができたり、非接触で衛生的な遠隔による監視ができたりするようになる。
少子高齢化の進展で各分野で人手不足が課題となっている。官能評価士ら人による香りの評価の負担軽減などにもつながる。「これまで人の目の代わりになるカメラや耳の代わりになるマイクのデジタル化は進んできたが、嗅覚のセンサーは少なく要望として多い」(説明員)。
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