強度と耐衝撃性を両立した新たなセルロース繊維強化樹脂、低コストで製造可能:材料技術
古河電気工業は強度と耐衝撃性を両立したセルロース繊維強化樹脂「CELRe」を開発した。セルロース繊維を51%含有する「CELRe KCPグレード」の他、強度と耐衝撃性を両立した「CELRe DFグレード」の2タイプで展開する。
古河電気工業(以下、古河電工)は2023年5月19日、強度と耐衝撃性を両立したセルロース繊維強化樹脂「CELRe(セルレ)」を開発したと発表した。
粉砕/成形を繰り返しても強度低下が少なく、マテリアルリサイクルに対応
従来、セルロース繊維は樹脂への分散が難しく、そのためにはナノ化や疎水化のプロセスを経る必要があることから、製造コストが高く課題となっていた。CELReではセルロース繊維のナノ化や疎水化を経由せず、熱可塑性樹脂にセルロース繊維を直接分散する独自プロセスにより、必要とするエネルギーが少なく、低コストで製造が行える。
μmオーダーのセルロース繊維を分散したCELReは、ベース樹脂のポリプロピレン(PP)より弾性率が向上し、熱膨張率が低下する他、粉砕/成形を繰り返しても強度低下が少なく(4回で10%未満)、マテリアルリサイクルに応じ、従来のプラスチック成形機/金型で射出成形が可能だ。
加えて、セルロース繊維を51%含有する「CELRe KCPグレード」の他、強度と耐衝撃性を両立した「CELRe DFグレード」の2タイプで展開する。
CELRe KCPグレードは、ナフサを原料とする樹脂材料からバイオマス材のセルロース繊維に置き換えているため、石油資源の節約とCO2排出量削減に役立つ。こういった点が評価され日本有機資源協会認定の「バイオマスマーク50」を取得している。耐衝撃性を改善したDFグレードは、従来のセルロース繊維強化樹脂が適用できなかった製品への適用が期待される。
今後も、同社はCELReの開発を通して製品のCO2削減とリサイクルなどを促進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。
開発の経緯
同社グループは、2021年に策定した「古河電工グループ 環境ビジョン2050」で掲げたバリューチェーン全体での温室効果ガス排出削減に取り組む中、バイオマス材を使いこなす技術に着目し、プラスチックなど資源循環の促進に向けてセルロース繊維強化樹脂の開発に着手した。
そして、光ファイバーケーブルや電力ケーブルの製造などで培ってきた樹脂混練技術を生かして、パルプと熱可塑性樹脂を二軸押出機で混練し、ワンステップでマイクロオーダーのセルロース繊維(約300〜700μm)を樹脂中に高分散させる技術を確立し、強度と耐衝撃性を両立したセルロース繊維強化樹脂のCELReを開発した。
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