三菱重工の事業利益は20%増に、コロナ禍抜け脱炭素が追い風になるか:製造マネジメントニュース
三菱重工業(以下、三菱重工)は2023年5月10日、2022年度(2023年3月期)の決算発表を行った。2021年度比で事業利益は20.6%増の1933億円となった。コロナ禍からの回復に加えて、ガスタービンなどの需要が増加した。
三菱重工業(以下、三菱重工)は2023年5月10日、2022年度(2023年3月期)の決算発表を行った。2021年度比で事業利益は20.6%増の1933億円となった。コロナ禍からの回復に加えて、ガスタービンなどの需要が増加した。
全セグメントで売り上げ収益が前年度比増
三菱重工の2022年度の業績は、受注高が前年度比10.7%増の4兆5013億円、売上収益が同比8.9%増の4兆2027億円、事業利益が同比20.6%増の1933億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同比14.9%増の1135億円だった。ただし、「2021年度からの為替レート変動の影響で、受注高と売上収益には約3000億円の増加がそれぞれ含まれている」(三菱重工 取締役常務執行役員 CFOの小澤壽人氏)として、これを除外すると売上収益に関しては「ほぼ前年度並み」(同氏)になる。
2021年度に対する2022年度の事業利益の増減要因を見ると、中量産品や航空エンジンなどの売り上げ増で390億円の増益効果が生まれたが、材料費や輸送費の高騰、サプライチェーンの混乱による生産調整の影響で80億円の減益効果が生じている。この他、火力事業については、石炭火力事業関連のプロジェクトで生じた一過性の損失処理などで500億円の減益効果が生じた。
セグメント別に見ると「エナジー」「プラント・インフラ」「物流・冷熱・ドライブシステム」「航空・防衛・宇宙」の全てで売り上げ収益は前年度比増となったが、事業利益はエナジーのみ同比減となった。
なお、SpaceJet事業に関連する損益はこれまで「航空・防衛・宇宙」セグメントに含まれていたが、今回の決算発表からは「全社又は消去」として扱われている。
2023年度の事業見通しは、受注高は2022年度比2.2%増の4兆6000億円、売り上げ収益は同比2.3%増の4兆3000億円、事業利益は同比55.2%増の3000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同比45.6%の1900億円としている。2023年度は同社の3カ年計画である「2021事業計画」の最終年度となる。
脱炭素関連のニーズは追い風になるのか
2022年度の業績を振り返り、三菱重工 取締役社長 CEOの泉澤清次氏は「コロナ禍からの市場回復といった外的要因もあるが、これまで取り組んできたコアビジネスの成長や、サービス事業の拡大、生産性向上といった内部的な打ち手も功を奏し、それぞれ効果を生んだものと評価している」と語った。
分野別に見ると、ガスタービンや航空エンジン、製鉄機械、物流機械などが好調だった。航空エンジンは「コロナ禍前の水準を上回るレベル」(泉澤氏)に成長した。また、製鉄機械は製造時のCO2排出量を抑えたグリーンスチール関連装置の需要が活発化している様子が見受けられるという。ガスタービンやCO2を回収するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)装置のニーズも増えているようだ。
ガスタービンについてはカーボンニュートラルの社会的動向を背景に、「将来的な水素炊きの可能性や、CO2回収技術との連携可能性を踏まえつつ、さらに、もともとの発電効率が良いということもあって引き合いが活発化している」(泉澤氏)とする。一方で製鉄機械に関しては、グリーンスチール関連の投資が今後も見込まれるとしつつも、三菱重工の事業貢献という点では「(製鉄機械の)受注サイズはほぼ最大に近いレベルで、この先、大きくジャンプアップすることは見込んでいない」(小澤氏)とした。
この他、社会インフラのスマート化に関連して、物流倉庫の自動化や、データセンター向けの省エネ/脱炭素ソリューションの実証実験を行い、導入に向けた取り組みを進めているとした。一方で、自動運転関連の取り組みに関しては「(実現性は)まだ道半ば」(泉澤氏)と説明する。
2023年度の事業見通しについては、ガスタービンや原子力発電、防衛分野での事業成長が引き続き見込まれるとして「計画達成は可能と見ている」(泉澤氏)と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「SpaceJet」は機体完成も事業化に至らず、三菱重工が中止を正式決定
三菱重工業は2023年2月8日、同日の取締役会で、連結子会社の三菱航空機とともに開発を進めていたリージョナルジェット機「SpaceJet」の開発中止を決定したことを公表した。 - 三菱重工は円安効果及ばず減益に、石炭火力の欧州拠点縮小でも費用かさむ
三菱重工業(以下、三菱重工)は2022年8月5日、2023年3月期(2022年度)第1四半期の連結業績を発表した。受注高が好調な事業もあったが、原材料や燃料費の高騰やサプライチェーンの混乱に加え、円安影響によって、事業利益は前年同期比で減益となった。 - 三菱重工はコロナ乗り越え増収増益、原子力や物流など脱炭素需要取り込み狙う
三菱重工業は2022年5月12日、2022年3月期(2021年度)の連結業績を発表した。GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント)事業や原子力事業などが利益をけん引し、材料費や輸送費などの高騰といったマイナス影響をカバーし、増収増益となった。 - 2030年までに2兆円投資、三菱重工がカーボンニュートラル技術の開発加速
三菱重工業は2022年3月18日、同社のカーボンニュートラル実現に向けた目標設定や取り組みの現状についての説明会を開催した。同社の総投資額に占めるカーボンニュートラル関連の投資比率を高め、2030年までに約2兆円を投じるとしている。 - 三菱重工が機械システム知能化基盤「ΣSynX」を展開、新領域拡大で手応え
三菱重工業が2021年度第2四半期決算と、2021〜2023年度の中期経営計画「2021事業計画(21事計)」の進捗状況を発表。2021年度上期業績はコロナ禍からの回復が進んでおり、21事計についても「一言で言って順調に進捗している」(三菱重工 社長 CEOの泉澤清次氏)という。