三菱重工の2021事業計画は順調に推移、火力発電脱炭素化需要がけん引:製造マネジメントニュース(1/3 ページ)
三菱重工業は、2021〜2023年度を対象とした「2021事業計画」が一部を除き計画通りに進んでいることを明かした。
三菱重工業(以下、三菱重工)は2023年4月5日、東京都内で記者会見を開き、2021〜2023年度を対象とした「2021事業計画」の推進状況について発表した。
2021事業計画では、事業環境の変化に柔軟に対応しながら施策を計画通りに推進し、着実に成果を刈り取ることで、2023年度に7%の事業利益率を達成することを目標に掲げている。
将来は航空エンジンの整備能力を3倍に増強
この目標を達成するために、「コロナからの回復」「既存事業の伸長」「サービス拡大」「課題対策・構造転換」といった施策を展開し、その効果が表れてきているという。
コロナからの回復では、ターボチャージャーや物流機器といった中量産品の売上高を2021年度にコロナ禍前の水準まで回復済みで、材料費や輸送費などの高騰の影響もタイムリーに販売価格に転嫁し、影響を最小限に抑えた。
航空エンジンの売上高は2022年度期末時点でコロナ禍前の水準を超える状態になっているという。さらに、世界中で増加するMRO(航空機の整備を行う事業)のニーズを踏まえ、航空エンジンの整備工場である三菱重工航空エンジン 第6工場で拡張工事を行い、将来は整備能力を3倍に増強する。
三菱重工 取締役社長 CEOの泉澤清次氏は、「エアロストラクチャー事業(民間航空機構造Tier1)については、受注高がコロナ禍前と同水準まで回復しておらず、2023年度後半までこのペースが続くだろう。しかし、一定の受注高はあり、復調していくとみている」と話す。
既存事業の伸長では、ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)の売上高が、2020〜2022年度にかけて年平均で13%の成長率に達する。これは、環境負荷低減と旺盛な需要から、ガス火力のニーズが底堅い他、高い信頼性が評価され、事業規模が拡大するためだという。
製鉄機械の売上高は、2020〜2022年度にかけて年平均成長率18%で伸長する予定だ。この伸長は、同社が持つ電炉化や直接還元鉄などの独自技術とプロセス、ノウハウにより、グリーンスチール投資が活発化する欧米、中東、アジアなどが抱える製鉄設備の高機能化および高効率化のニーズに応えられることに起因する。
TOMONIのサポート体制を世界5拠点に拡充
サービスの拡大では、発電プラントの脱炭素化を加速するインテリジェントソリューション「TOMONI(トモニ)」のサポート体制を世界5拠点に拡充し、100ユニット以上の発電プラントを遠隔監視できるようにする。TOMONIで得られたデータを用いて、発電プラントの運用効率を改善する手法も提案していく。
AR(拡張現実)を活用したリモートサービスの体制も北米で確立し、ユーザーの緊急要請に常時対応できるようにする。
加えて、子会社の三菱ロジスネクストが2019年に米国販売会社のEquipment Depotを買収したことで、直販エリアを約25%から約35%に拡大し、物流機器のレンタル、中古車、倉庫機器などのサービスメニューを拡充している。
こういった取り組みにより、2022年度における三菱重工のサービス事業の売上高を2020年度と比べて2700億円ほど伸長させる。
課題対策・構造転換では、艦艇、洋上風車、工作機械などの事業を対象にポートフォリオの見直しを行い、工場の集約と欧州拠点の集約により火力事業も再編する。製鉄機械事業の一部である欧州拠点の売却も実施し、発電機事業のジョイントベンチャー(JV)設立も検討しているという。
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