三菱重工の2021事業計画は順調に推移、火力発電脱炭素化需要がけん引:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
三菱重工業は、2021〜2023年度を対象とした「2021事業計画」が一部を除き計画通りに進んでいることを明かした。
エネルギー革命で脱炭素化
目標の達成に向け、成長領域の開拓として、「エナジートランジション(エネルギー革命)」と「社会インフラのスマート」向けの施策も展開している。
三菱重工では、欧州で先行していたエナジートランジションの動きが、米国を中心に加速し、既存インフラで生じるCO2を削減するために、火力発電の脱炭素化が進むとみている。
火力発電の脱炭素化を後押しする技術については、「CO2を減らす技術」「CO2を回収する技術」「CO2を出さない技術」の順に実現していくと予想している。
CO2を減らす技術では、三菱重工製のガスタービンとアンモニア混焼ボイラーがある。同社のガスタービンは、石炭火力から低炭素であるガス火力への置き換えニーズに対応可能なだけでなく、将来におけるCO2回収装置の取り付けにも応じ、容易に水素焚き転換できる点が評価され、2022年に世界シェアで1位を獲得している。引き続き、高いシェアを堅持し、事業規模の拡大を図るという。
アンモニア混焼ボイラーに関しては、石炭火力で2030年代前半の商用運転開始をめどにアンモニア50%以上の高混焼技術を開発中だ。
CO2を減らす技術では、カナダのアルバート州で天然ガス焚きGTCC向けのCO2回収プラントの基本設計を同社は受注しており、GTCCとCO2回収システムの両面で顧客の脱炭素化を支援している。
CO2を出さない技術として、水素炊きガスタービンの開発も進めており、2025年の商用化に向け、燃焼試験では50%の水素混焼を達成し、「EUの2050年カーボンニュートラル目標に貢献する事業」のしきい値であるEUタクソノミーの目標値もクリアしている。2030年に大型ガスタービンで水素100%専焼を行うための技術開発も推進しているという。
一方、多様なCO2の排出源や貯蓄、利活用がつながるエコシステム「CCUS(分離および貯留したCO2の利用)デジタルプラットフォーム」の構築も進めており、これまでに培ったCO2の回収実績を基に、多様な分野の回収ニーズに応えている。協業パートナーと共同で、バリューチェーンの構築に向けた取り組みも加速している最中だ。
泉澤氏は、「米国で2022年8月に約4000億ドルの気候変動対策を盛り込んだインフレ削減法(IRA)が成立したことが追い風になり、欧米を中心にCO2回収事業の商談が活発化している。当社でもCO2回収事業の受注が2022年に、2021年と比べ倍増し、年間約5300万t(トン)のCO2を回収するようになっている。約5300万tのうち、約3000万tは米国分が占めており、米国に大きなCO2回収市場があることが分かっている。今後、さらに拡大する可能性が高い米国市場を中心にCO2回収ニーズに応え、事業拡大を図る」と語った。
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