品質管理のための解析手法はどうすればデジタル化できるのか:トヨタ式TQM×IoTによる品質保証強化(7)(3/3 ページ)
本連載は、品質管理の枠組みであるトヨタ式TQMと、製造現場での活用が期待されるIoT技術を組み合わせた、DX時代の品質保証強化を狙いとしている。第7回は、品質管理のための解析手法をどうすればデジタル化できるかについて紹介する。
4.定型解析と非定型解析
ビッグデータ解析を行うには、5年程度の過去データを含めた全データをサーバに格納しておく必要があります。ただし、全データから必要なデータを取り出すために検索したりするとかなりの時間を要しますので実用に耐えません。そのために「定型解析」と「非定型解析」に分けた運用をする必要があります(図5)。
(1)定型解析
直近のデータを用いた定型グラフを見て、傾向分析や異常発生時の要因解析を実施します。その際には当日のデータや直近1カ月分のデータを使用することで、検索時間を短縮します。定型グラフは「2.QC7つ道具のデジタル化」で取り上げたグラフを使用します。
(2)非定型解析
過去データと比較したい場合には、必要な過去データを都度取り込んで分析します。サーバの全データから、品目や不具合内容などの条件で絞り込んで対象となるデータを抽出し、分析したいデータと比較することで要因特定の迅速化につなげます。
5.要因特定の迅速化
要因特定を迅速に行うには多角解析の際に以下に挙げる観点で分析します。
- 管理指標による判断:不良率や標準偏差などの管理指標値をラインごとに定期監視して品質状況の良しあしを確認します。指標値が悪くなった原因を重点的に確認することで、不具合発生の防止につなげます
- ヒストグラムや相関図による層別:バラつきや傾向を見るグラフの中で、ロット、使用設備、使用材料で層別をすることにより加工要因または材料要因の判断を迅速に行います
- 比較分析:分析対象のデータと比較したいデータを縦、横に並べたり重ねたりして分析します。同じロットで複数項目のグラフの傾向を見たい場合は縦に並べます。同じ項目で複数ロットのデータを比較する場合は横に並べます。分析対象のデータと比較したいデータがどの程度乖離しているか、似ているかを確認したい場合は重ねます
- 数値をマップに置換:数理データだけを見ていても分かりにくいため、数値を色分け(高い値は赤、低い値は青、真ん中は白など)して、ビジュアルで違いを可視化することにより、品質の良しあしや不具合発生の予兆、原因特定を迅速化します
ビッグデータ解析は、膨大なデータの中からグラフ表示を切り替えたり広い範囲から絞り込んでいったりという作業を直観的に行えるので、不具合発生の予兆を発見して対処することにより、不具合発生の防止や不具合発生の際の要因特定の迅速化を図れます。そのためにも、ここまで挙げたポイントを押さえることで高度な品質管理が可能になります。
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筆者紹介
株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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