Arm日本法人の横山新社長が会見、車載など4分野に加え半導体教育のIP活用に重点:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
Armの日本法人であるアームの代表取締役社長に就任した横山崇幸氏が国内市場における事業方針について説明。車載など4分野に注力する他、大学などにおける半導体関連人材の教育/育成でArmのIP活用を広げていく方針を示した。
「日本の役割はまだまだ大きい」
日本市場については「欧米やアジア諸国から後れを取っているという意見もあるが、日本の役割はまだまだ大きいと考えている。スマートフォンの中を開けてみれば、電子部品や半導体モジュールをはじめ多数の技術が入っている。技術立国としてのポテンシャルはまだまだ高い」(横山氏)と見ており、今後も未来のテクノロジーを支えていくという確信があるという。
4つ挙げた日本市場の重点注力分野のうち「国内パートナーとの協業強化」については、半導体メーカーだけでなく、半導体メーカーの顧客であるセットメーカーとの関係性構築を強化していく方針である。
「オートモーティブ」では、世界の自動車の30%を生産する国内自動車産業が加速しているCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)への対応を支援するため、クラウドベースでの車載ソフトウェアの開発を推進するオープンアーキテクチャ「SOAFEE」やディスプレイメーターなどを活用する「デジタルコックピット」、古いプロセッサをArmアーキテクチャに移行する「MCUマイグレーション&コンソリデーション」、機能別に分割した複数のチップで半導体を構成する「チップレット技術」に関する提案を進めていく。横山氏は「Armにとって自動車関連の売上高は2021年から2022年で倍増しており、今後の伸びも期待できる市場だ」と強調する。
「IoT」については、Armが得意とする低消費電力性能と安心して通信をつなげられるセキュリティ機能を軸に、エッジAI(人工知能)、組み込みストレージ、イメージングなど日本企業が得意とする分野への浸透を図る。
そして「カスタムチップ採用の拡大」では、製品開発段階でArmの半導体IPを無償で利用できる「Arm Flexible Access(AFA)」の強化を挙げた。既にセットメーカーからは高い評価を得ているが、これをスタートアップや大学や研究開発期間にもAFAの活用を広げるべく体制を整備していく方針だ。
このAFAの展開との絡みでは、2nmプロセスでの半導体製造を目指すRapidusをはじめ日本政府による国内半導体生産の強化方針とともに求められている、大学などにおける半導体人材の育成にArmのIP活用を進めていきたい考えを示した。Armは本社のある英国ケンブリッジにおいて大学や研究機関との連携を重ねてきたが、日本国内では限定的だった。「即座に事業収益に直結する活動ではないこともあってこれまで十分にはやれていなかったが、専任の人員を配置するなどして取り組みを強化したい」(横山氏)としている。
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