最新コア「Cortex-M85」を採用、ArmがIoT機器開発期間短縮ソリューションを拡充:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ArmがIoT機器の開発期間を大幅に短縮する包括的ソリューション「Arm Total Solutions for IoT」のラインアップを大幅に強化すると発表。同ソリューションの検証済み統合型サブシステム「Arm Corstone」に、新たなマイコン用プロセッサコア「Cortex-M85」を中核とする「Corstone-310」などを追加している。
Armは2022年4月26日(現地時間)、IoT(モノのインターネット)機器の開発期間を大幅に短縮する包括的ソリューション「Arm Total Solutions for IoT」のラインアップを大幅に強化すると発表した。同ソリューションの検証済み統合型サブシステム「Arm Corstone(以下、Corstone)」に、新たなマイコン用プロセッサコア「Cortex-M85」を中核とする「Corstone-310」や、アプリケーション処理用プロセッサコア「Cortex-A32/A53」を利用可能な「Corstone-1000」を用意。Corstoneと機能等価な設計用IPパッケージをクラウド上の仮想環境に再現した「Arm Virtual Hardware(以下、AVH)」についても、Corstoneだけでなく全ての「Cortex-Mファミリー」を利用できるようにするとともに、NXPセミコンダクターズやSTマイクロエレクトロニクスの開発ボードに加えて、汎用の小型ボードコンピュータである「Raspberry Pi 4」のエミュレートも行えるようになった。
2021年10月に発表されたArm Total Solutions for IoTは、5年かかるといわれるIoT(モノのインターネット)機器の開発期間を3年で終えられることを特徴としており、検証済み統合型サブシステムのCorstoneと、クラウド上の仮想環境であるAVH、そしてIoT機器に広く用いられているArmのプロセッサコア関連のエコシステムを整備する「Project Centauri」という3つの要素から構成されている。
Armの日本法人アームでバイスプレジデントを務めるブルーノ・プットマン(Bruno Putman)氏は「2021年10月にローンチしたArm Total Solutions for IoTは、パートナーとの活動を推進する中でさまざまな反響をいただいている。そこで、より高い性能と高度なセキュリティ、そしてさらなる製品化期間の短縮という要望をに応えるべく、今回のラインアップ拡充を決めた」と語る。
スカラーとベクター両方の演算性能を向上すべくアーキテクチャを再設計
まず、Corstone-310では、Cortex-Mファミリーで最新のプロセッサコアとなるCortex-M85を投入し、より高い性能という要望に応えた。
Cortex-M85は、スカラーとベクター、両方の演算性能を向上すべくアーキテクチャを再設計した。スカラー演算性能では、「Cortex-R53/55」と同様のインオーダー実行のスーパースカラーを採用し、「Cortex-M7」と比べて30%の性能向上を果たしている。一方、ML(機械学習)やAI(人工知能)の処理性能と関わるベクター演算性能では、ベクター演算処理技術「Helium」を再設計することで「Cortex-M55」と比べて20%性能を高めている。また、セキュリティについても、これまで採用してきたマイコン向けの「TrustZone」に加えて、ルネサス エレクトロニクスをはじめとする半導体メーカーと開発を重ねてきた拡張機能「PACBTI(Pointer Authentication and Branch Target Identification)」によりさらに向上できるとしている。
なお、Corstone-310では、Cortex-M85とNPU(ニューラルプロセッシングユニット)である「Ethos-U55」との組み合わせにより、これまでマイコンベースのシステムでは難しかった音声認識を可能にする「Total Solution for Voice Recognition」を提供する。Cortex-M55を用いる「Corstone-300」では、キーワード認識までにとどまっていたことを考えると「Cortex-M85による性能向上の効果を理解できるだろう」(アーム 応用技術部 ディレクターの中島理志氏)。
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