20GHz超の周波数に対応した、世界最大規模の生体組織の電気定数データベース:医療機器ニュース
情報通信研究機構は、1M〜100GHzの電波に対する、58種類の「生体組織の電気定数データベース」を公開した。周波数に応じた比誘電率、誘電損、電気伝導率のリストをwebサイト上で閲覧、ダウンロードできる。
情報通信研究機構(NICT)は2023年3月30日、1M〜100GHzの電波に対する、58種類の「生体組織の電気定数データベース」を公開した。周波数に応じた比誘電率、誘電損、電気伝導率のリストをwebサイト上で閲覧、ダウンロードできる。
電気定数とは、物質固有の電気的な特性を示す指標の総称。生体組織では、筋肉や皮膚、臓器などの生体を構成する各組織の電気定数となる。生体組織の電気定数は、組織の種類や組成、周波数により異なる。
公開したデータベースは、20GHz超の周波数帯で初めて測定したデータを多く含む。生体組織の電気定数の測定には、接触により測定するセンサーが有用だが、100GHzまで測定できるセンサーは市販されていない。NICTは、1M〜100GHzの周波数範囲で電気定数を高精度に測定できるセンサーを2種類開発し、さまざまな生体組織の電気定数を測定可能にした。
これまで利用されてきた生体組織の電気定数データベースは、英国の研究グループにより1996年に公開されたものとなる。42種類の生体組織について、20GHzまでの電気定数データを公開している。
日本では、従来の携帯電話システムより高い28GHz帯を用いた5Gシステムが実用化され、今後さらに高い周波数の利用も見込まれている。しかし、20GHz超の周波数では電気定数が測定できない生体組織の種類が多く、電波ばく露のシミュレーションは、低い周波数の測定データから推定した電気定数を利用していた。
NICTが公開したデータベースは、電波の安全性評価や医療、ヘルスケアデバイスの開発時に数値シミュレーションへ利用できる。また、数値人体モデルと組み合わせることで、5Gシステムでの28GHz帯や従来の携帯電話より高い周波数に対する人体ばく露の正確なシミュレーションが可能となる。今後は、Beyond5Gや6Gなどの移動通信システムに対応するため、データベースを1000GHzにまで拡張する研究を進めるとしている。
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