中小製造業のIT化は地域全体で推進を、コスト高と人材不足に効くソリューション:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
標準化されたITシステムを中小製造業に導入することで、地域全体のサプライチェーン連携を強化するプロジェクトが、福島県の会津地方で進んでいる。プロジェクトの中核を担うのが「CMEs」という中小企業向けの業務改革プラットフォームだ。取り組みについて、アクセンチュアの担当者に話を聞いた。
地域におけるサプライチェーンのハブ企業をターゲットに
CMEsのメインターゲットとなるのは、従業員100人以上の中小製造業だ。こうした規模感の企業は「地域で一定の影響力を持つ、サプライチェーンのハブ企業と見なせる」(鈴木氏)が、デジタル化が進んでいない例も多い。これらの企業の数社で全体最適化が進めば、取り組みが次第に地域全体に波及していく可能性がある。
既に会津地方には、CMEsを導入した中小企業が何社かある。その1社では、取引先の20数社にサプライヤーポータルを利用してもらった。サプライヤーには紙やFAXでのやりとりが中心の零細企業も含まれており、抵抗を受けるのではないかと予想していたが、「実際に導入すると、手書きの帳面をめくることなく納入先の仕入れ実績を基に請求書を作成できるので便利だ、FAXを送る手間も省ける、と評価する声が上がった」(鈴木氏)という。
サプライヤーポータルはあくまでCMEsの付随したサービスなので、利用時にサプライヤーが費用を負担する必要はない。CMEs導入企業にとっても、取引時のFAXやメール確認などの工程や、それに関連した人員を削減できる利点がある。メリットを地域のサプライチェーン全体で享受することで、よりデジタル化が進みやすい環境を作る。
システム定着に向けた教育カリキュラムも
中小企業でのERPシステム普及を阻む要因はコスト以外にもある。その1つがIT人材不足だ。導入まではスムーズに進んでも、実際に使いこなせるかは導入先企業の担当者がどの程度システムに習熟しているかに大きく影響を受ける。しかし、「外部からIT人材を呼び込もうとしても、地方の中小企業がデジタル技術に明るい人材を雇用するのはかなり難しい」(鈴木氏)という事情がある。
そこでアクセンチュアは、CMEs導入企業を対象とした技術教育支援サービス「CMEsアカデミア」を提供する。専用のテキストブックや動画などを使った学習を通じて、CMEsの基礎的な機能や、実際の業務への適用方法などを社内担当者が自力で学ぶことができる。
CMEsアカデミアでは、CMEsを導入した架空の企業を題材にした学習を進められる。得意先からの注文に従い、購買、生産管理、販売管理の実績計上や会計処理を実行する中での処理方法などを学べる。システムの基本操作や運用における考え方の他、どのデータをどのシステムに入力するかといった初歩的な内容も一から理解できる。
「まず体験を通じてシステムのことを知ってもらい、実際に手を動かして理解を深めるというカリキュラムだ。通常の導入プロジェクトは後半に至るまでシステムに触れることができない。そこを逆転させて、架空ではあるが完成した業務プロセスを初期段階から提示することで、『カスタマイズは必要だ』という先入観から脱却してもらいやすい仕組みにした」(鈴木氏)
今後、アクセンチュアはCMEsアカデミアを切り口に、CMEsの全国展開を本格化する計画だ。既に福島県の隣県である宮城県でも、CMEsアカデミアの利用企業が出てきたという。個社が持つデータの秘匿性を担保しつつ、地域の中小企業におけるデジタル連携の推進を目指す。
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