中小製造業のIT化は地域全体で推進を、コスト高と人材不足に効くソリューション:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
標準化されたITシステムを中小製造業に導入することで、地域全体のサプライチェーン連携を強化するプロジェクトが、福島県の会津地方で進んでいる。プロジェクトの中核を担うのが「CMEs」という中小企業向けの業務改革プラットフォームだ。取り組みについて、アクセンチュアの担当者に話を聞いた。
標準化されたITシステムを中小製造業に導入することで、地域全体のサプライチェーン連携を強化する。こうした目標を掲げるプロジェクトが、福島県の会津地方で進んでいる。プロジェクトを推進するのは、「アクセンチュア・イノベーションセンター福島」だ。アクセンチュアが2011年の東日本大震災を契機に設立した組織で、現在ではスマートシティーの実現や、地域振興のための施策を展開する。
プロジェクトの中核を担うのが「CMEs(Connected Manufacturing Enterprises)」という中小企業向けの業務改革プラットフォームだ。アクセンチュアがこれまで蓄積してきた、基幹業務プロセスのデジタル化に必要なノウハウをベースに構築したという。
特徴的なのが個社に閉じた改革ではなく、地域全体の生産性向上を志向している点だ。非競争領域の業務を標準化することで、サプライチェーンを構成する企業間でのデジタル連携を容易にする環境づくりを進める。企業間での取引の仕組みまで標準化できれば、業務効率化だけでなく共同調達や共同営業を実現する道も開かれる。
アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 アクセンチュア・イノベーションセンター福島 シニア・マネジャーの鈴木鉄平氏は「中小製造業の多くは、調達や生産管理、在庫管理といった基幹業務の改革にほとんど手が回っていないのが実情だ。大企業に比べれば、生産性も高いとはいえない。逆に言えば、ERPシステムなどを適切に導入、活用できれば、中小企業には大きな伸びしろが期待できる」と話す。
中小製造業でも導入しやすい価格帯に
CMEsでは、ERPシステム「SAP S/4HANA」を活用して、販売管理や在庫管理、購買管理、生産管理、管理会計、財務会計の生産性向上を目指す。電子帳簿保存法やインボイス制度などのような新制度にもバージョンアップデートで対応する。
これに加えて、MES(製造実行システム)に生産実績を入力できる仕組みや、取引先からの受注管理をWeb上で行えるサプライヤーポータルもサブシステムとして導入する。サプライヤーポータルを通じて、FAXや電話での受発注が中心の零細企業とのやりとりも管理しやすくなる。
導入に際して、部門別の業務プロセスを考慮したカスタマイズやシステムそのものに手を加える追加開発は基本的に行わない。システムに業務を合わせていく「Fit to Standard」の考えに基づき、プロセスや業務の個別最適化から全体最適化への脱却を目指す。
カスタマイズ対応しない分、中小企業でも導入しやすい価格帯でERPシステムを導入可能になったという。さらに利用料金を月額のサブスクリプション方式にすることで、初期導入費用も低減した。鈴木氏は「中小企業でERPシステムの利用が広まらない理由の1つが、費用の高さだ。導入費用も保守費用もかなり高額になる。こうした負担を極限まで減らして導入を促進する」と説明する。
導入企業からは、「基幹業務のデジタル化を一気に進めることで、本当に専念したい、自社の強みを生かせるモノづくりができるようになった」(鈴木氏)という声をもらっているとした。
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